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<3> 現場 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

前話 <2> 依頼 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説 - HyogoKurumi.Scribble


<3> 現場

 キャンプシップのテレプールを通り抜け、シップブランクに降り立った。
 その場所は事件現場からそう遠くないところにあるビルの屋上だった。エーテルはひとまず、街全体を見渡すことにしたのだ。
 火の手はないが、まだ噴煙が立ち上っているところがあった。少なくとも視界に映る範囲は壊滅状態だ。
 ざっと見渡して現状を確認したエーテルは、肩にあるボタンを押し、フォトンウェアを起動してそこから飛び降りた。この装置は、一般的には高所作業員が命綱代わりに使用するものだが、彼女は移動時の時間短縮に活用している。肉眼で確認できるほどの高濃度フォトンが使用者の全身を包み込み、上昇するほどのパワーはないが、使用者に一定の浮遊力を与える。
 ビルの外壁に沿ってゆっくりと下降している時、向かいの高層ビルが傾いていることに気が付いた。ダーカー襲撃時は、ここでも猛攻があったようだ。

 地面に降り、携帯ビジフォン端末で目的地までの経路を確認する。なるべく広い道路を通ることにした。ダーカーの掃討は終わっているので脅威はないが、建物崩落の危険は残っている。

 放置された移動車両やボロボロのビル群――その合間を縫うように続くハイウェイを歩き進んだ。
 道中、アインからの通信が入った。 
『――レオナード夫婦の事件が起きたのは先月の5日。現場は今きみが向かっているブランク第二公園の遊歩道だ。第一発見者は近所に住む老夫婦。子供の泣き声を聞いて駆けつけたらしい。――老夫婦から警察に通報の後、三十分以内には遺体の収容と子供の保護、そして各主要道路上にて検問が配備されている。――しかし犯人逮捕、特定に繋がる情報は一切無いまま、事件発生から十日後に、シップブランクはダーカーの襲撃を受けてしまっている。恐らくレオナード夫婦の部屋もそのままの状態だろう』
「その後は?」
『警察のサイトで目撃者からの情報提供が呼びかけられているのみ。もう、忘れられた事件だよ』
「そう公園が無事なら、なにか残ってるかもしれないわね」
『極めて低い確率だがね。現場の保存は一週間だけだったようだし』
「夫婦が襲われた理由は?」
『財布が奪われている事から、金品目的だと考えられる』
「……酷い事件ね」
『ミシェルは専業主婦だったが、トリシュは大手企業に勤めていた。それに、この遊歩道はよく家族で通っていたとの情報もある。事件前からマークされていたとみるべきだろう』

  ◆◇◆

 公園に着いた。他の場所と同様、ここも酷くやられていた。どす黒く変色した地面や建造物の壁は、避難し遅れた住人や戦死したアークスの血痕だろうか。
 エーテルは遊具を横目に奥の遊歩道へ足を進めた。そして、しばらく進んだ先でアインが言った。
『……ここだ』
 そこはなにも無いところだったが、どうやらこのポイントらしい。アイモニターには当時のニュース映像が表示された。その映像が現場との一致を示している。
 痕跡は期待できないが、エーテルは現場のデーターを取ることにした。

 アイモニターを通してみることで様々な情報解析が行える。例えば、車両のタイヤ痕や、目には見えない血痕なども、成分さえ残っていれば確認することができる。しかし、どれだけ見回してもこれといって特別な残留物の反応はなかった。やはり現場解放時に清掃されたのだろう。
 遊歩道の周囲には草木が生い茂り、あちこちに死角ができていた。そこから急に襲われたら、ひとたまりもないように思えた。
「遺体の状況は?」
『頸部の切断。切断面からみて、鋭利な刃物による物理的な攻撃とみられている。恐らく、一瞬で切り落とされたものだと思われる』
 夫婦の死因を聞いたエーテルは、父スノゥを思い出した。
 アークスのメディカルセンターで、スノゥのボディは首と胴体が離れていた。既に脳死しており、再起動は不可能と判断された。
 それは三年前、エーテルが十七歳の時のことだった。
 スノゥを殺した犯人も、未だ捕まっていない。
エーテル? 聞いているか?』
「……ごめん、なんでもないわ」
 エーテルは意識を仕事に戻した。
「セキュリティカメラは? なにか映ってなかったの?」
 公共の場には防犯用のセキュリティカメラが備えられているが、
『遊歩道内の出入口に設置されているのみで、映像は役に立たないものだ。映っている対象が多すぎる』
「そんなとこだと思ったわ……期待してない」
 エーテルはアイモニターを外した。データーは十分に取れた。なにもなかったわけだが、依頼者の希望で調査ログの提出が必要になる場合がある。

  ◆◇◆

 次に、レオナード夫婦の住んでいた住居ビルへ向かった。
 多少の損壊は見受けられるものの、ビルは元の外観をほぼ留めていた。幸運だったといえる。建物の傾斜も見受けられない。しかし、電力は供給されておらず、エレベーターは停止していたので階段を使う必要があった。
『できれば屋外の非常用階段から登ってほしい。崩落の危険は、ゼロとはいえない』

 エーテルはアインの注意に従った。施錠されていた非常用扉を蹴破り、螺旋階段を登って5階まで進んだ。
 静まり返った通路は外気の音もなく、ほぼ無音に近い空間だった。
 依頼人の部屋はオートロックだったので、キーロックの解除をアインに任せることにした。携帯ビジフォンから伸ばしたケーブルを接続する。 
『……オーケーだ』
 停電時に閉じ込められる状態を防ぐ為、玄関ドアだけは独立した電気系統が使われている。今回、それは無事だったようだ。
 ガシャンと重そうな金属音がドア内部で響く。ロックが解除された。ただ、開閉機能は失っていたので、手動でドアを開けた。
 そして、室内に足を踏み入れた。

  ◆◇◆
 廊下には観葉植物や絵画が飾られていた。それなりに裕福だったことが窺える。

 奥のリビングに向かい足を進めた、その時だった。
エーテル、その先でアンノゥン反応だ。気をつけろ』
 とっさに脱衣所に身を潜め、銃を構えた。
 壁に背を預けたまま、静かな動作で通路の先を覗き込む。
「(ここからじゃ見えない……ていうか、アンノゥンってなによ?)」
『わからない。ダーカー反応に近いのだが……データー不足で解析できないんだ。肉眼で確認してくれ』
「(はぁ……仕方ないわね)」
 わからないものはどうしようもない。エーテルは注意深く進んだ。

 誰もいないはずのこの場所で、一体なにが待ち受けているというのか。
 そして、対象を確認した。
「……アイン、犯人がわかったわよ」
 リビングに女性型のキャストが突っ立っていた。スカートを履いた外見といい、メイド型アンドロイドに見えなくもない。
 直立不動に、閉じられた瞳。機能は停止しているようだ。避難の際、ここに放置されたのだろう。そう思えた。
「個人製作のメイドロボなんじゃない? それならメーカーシグナルがないから、正確な解析もできないでしょ」
『たしかに、その可能性はあるが……注意してくれよ』
 アインはこのスケールの家庭にメイドロボが必要だったとは思えなかった。なにより、ダーカー反応に近い信号を発する彼女の存在に、どうしても気を許せない。
 その時だった。機能停止しているようにみえたメイドロボが、急に顔を上げたのだ。
「――ふふっ、待ってましたよお。うふふっ……」
「なっ……!?」
 彼女のボディを不気味なオーラが纏っていた。その歪みの中から、ライフル銃を取り出した彼女は、その銃を抱くように、ぎゅっと握り締めた。
 その行動の意図はわからないが、エーテルは反射的に一歩下がり、銃を構えた。全身の感覚が、今までにないほどの強さでレッドアラートを発していた。
「やる気!?」

「さあ、遊びましょうか……うふふふふっ……」

 彼女は不敵な笑みを浮かべていた。
 血のように赤く染まった瞳には、エーテルの姿だけが映っていた。 

 

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 表紙と挿絵は絵師のnukaさんに描いていただきました!

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