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人は、言葉からは逃れられない。

<12> エピローグ / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

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<12>

 ブラインドの隙間から明かりが漏れていた。時計を見ると十一時になろうとしていた。また、昼近くまで眠ってしまったらしい。

 顔を洗っても、まだ目が覚めた気がしなかった。研究所でのあの一夜から一週間も経つのに、未だに起きてる間は軽い眠気が拭えない。覚醒による後遺症だろうか。

 昨日、政府からの通達で、また三年間、これと共に過ごすことが決まった。

 ゼノとエコーがアークス連盟を通して必死に掛け合ってくれたらしいが、装着義務の免除は叶わなかった。

「ひどい法律ね」

 後に、エコーが送ってくれたメールにはそう書いてあった。

 その言葉だけでも理解者が増えた気がして、少し嬉しくなれた。

 事件の事は各メディアが大きく報じた。光子エネルギー研究所の院長が光子多感症患者をモルモットにしていたというのだ。政府関係者が起こした非人道的事件というだけあって、どのメディアも連日報道を繰り返している。

 ただ、実験内容などの具体的なことは明らかにされていないようだった。クルードも話していたように、社会の秩序を維持する為、重要なことは内々でもみ消すつもりなのだろう。そうとしか考えられなかった。
 捕らわれていた光子多感症患者が全員、無事救助されことだけが救いだった。レオナード夫婦の娘のミライはまた施設へ戻ったが、トレーニング期間が終了した後は、橘が引き取ることになったらしい。

 自分は三日三晩眠りこけていたが、気絶してからのことは、エコーから届いたメールでだいたい知ることができた。

 ゼノとエコーはクルードを拘束した後、アークス連盟に通報。その後、政府の特殊部隊が研究所に押しかけ、全てを持っていったそうだ。

 そして事件から一夜明けた翌日の夜、勾留中だったクルードが留置所で自殺――光子多感症患者の身元が確認されたのはその翌日。衰弱の激しい者もいたようだが、命に別状はないようだ。

 エーテルが目を覚ました時にはもう、自分が関われる範囲を超えた状況になってしまっていた。

 クルードが自殺した理由はわからなかった。遺書などはなかったらしい。ただ、あいつ自身が光子多感症だったことを聞いて、エーテルはやるせない想いを抱えてしまった。
 もしかしたら社会になんらかの恨みを持っていたのかもしれない。そんな歪められた感情からあの研究が始まったとすれば……。それにクルードはダーカーの研究にも携わっていたのだから、ダーカーの邪気に精神を蝕まれてしまい、だからあんな風に狂ってしまったと考えることもできた。
 クルードが死んでしまった今では、全ては闇の中だった。
 そんな所見と、事の顛末がつらつらと綴られたエコーからのメールの最後には、『この件は忘れた方がいい』との一文があった。

 エーテルは複雑な想いを抱えたまま、メールをゴミ箱に捨てた。二度と読み返すはことはないだろう。

 警察署へ行ったエーテルは事件の事情聴取の後、一緒に押収されてしまっていた所持品をようやく返してもらった。
 それは暴発して吹き飛んだあのヤスミノコフ2000Hであった。
 エーテルはその足でマークスの店に向かった。

  ◆◇◆

 グリップとトリガーしかない銃の欠片を、渋い顔で凝視するマークス。

「えらい事件に巻き込まれたとは聞いていたが……なにをやったら、こんな風に銃が吹き飛ぶんじゃ?」

「いや~、色々あってね……」

「もしや、わしのせい?」

「それは絶対違うから安心して」

 恐らく、エーテルフォトンパワーがバレルの中で滞留し、発砲時の衝撃で暴発したものと考えられた。元々ガタがきていたことも関係あるだろう。ただ、アインにはスノゥがエーテルを救ったように思えていた。だから、詳しくは話さなかった。自分らしくない判断だと思ったが、それでいいと思った。

「こいつは無理じゃ。修復不可能じゃ」

 言われなくても分かっていた。エーテルは代わりの銃を買いに来たのだ。

 するとマークスは店の奥へと姿を消した。そして、木箱を抱えて戻ってきた。それをドカッとカウンターの上に置くと、バールのようなもので蓋をこじ開けた。

 木箱の中には、一丁の双機銃が収められていた。

「これもしかして、ヤスミノコフ9000M?」

 実弾銃が好きなら誰でも知っている、伝説の双機銃であった。

「そうじゃ。スノゥが愛用していた銃じゃよ」

「スノゥが?」

 三年前の、雨の日の夜だった。突然、店に現れたスノゥが、マークスにこれを預けていったらしい。

 日付はうろ覚えだが、スノゥが失踪した時期と重なっていた。 

「嬢ちゃんが、一人前になったら渡してやってくれだとよ」

 エーテルはグリップを掴んでみた。初めて持つはずなのに、不思議と手に馴染んだ。

 マークスは髭をいじくりながら言った。

「多少、軽量化してある。元のままじゃ嬢ちゃんの小さな手では持ちにくいと思ってな。さしずめ〝ヤスミノコフ9000Mマークスカスタム〟といったところか。ほっほっほっ」

 エーテルは見上げるようにして銃を持った。これ以上ないものに、言葉を失っていた。

『良かったな。最高の相棒じゃないか』

「……うん」

 ただ、エーテルはそう言うと、木箱に銃を戻した。

「でも、いいわ」

「どうしてじゃ?」

「マシンガンなんて使い慣れてないし、わたし、まだ未熟者だから。ほら、腕輪だってとれてないし。それに……」

 自分には最高の相棒がいるのだから――と、その言葉は言わなかったが、とにかくエーテルは、まだ自分はこの銃を持つに値しないと考えたのだった。

『それに?』

「ううん、なんでもない」

『……まぁ、きみがそう言うなら、尊重するが」

 だが、二人の会話を遮るようにマークスは言った。

「……〝弘法筆を選ばず〟という言葉があってな、本当に優れたもんは道具を選ばんもんじゃ」

 マークスはエーテルの手をぐいっとひっぱると、無理やり銃を握らせた。

「嬢ちゃんなら十分、こいつを振り回す資格があるじゃろう。銃がお主を選んでおるわ。わしにはわかる」

 そう言って、堅物だったはずのマークスが、今まで見たことのないほっこりとした笑みを見せてくれた。

 それ以上の言葉はいらなかった。

「……わかった。ありがとう、マークス」

『私も、それがいいと思う』

 エーテルは改めてヤスミノコフを手に持つと、それをぎゅっと抱きしめた。

「わたし、頑張って使いこなせるようになるよ」

 ピピー ピピー

 エーテルがそう言った時だった。突然、腕の端末からアラームが鳴ったのだ。

「わっ! やばっ!」

エーテル、バイトの時間だ!』

「マークスこれ、ごめん! 帰りに取りにくるから!」

 またマークスは銃を押し付けられ、そしてエーテルとアインは大慌てで店を出て行ってしまった。

「……やっぱりまだ、未熟だったかのぅ」

 なんともしまらない二人の様子をみて、マークスはそう、誰ともなしに呟いたのだった。

 

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小説情報 

 表紙と挿絵は絵師のnukaさんに描いていただきました!

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