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人は、言葉からは逃げられない。

発達障害者と就労について思うこと『努力の最適化』

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先日、『空のとびかた』プロジェクトの活動で、「改正障害者雇用促進法」について社会福祉士の方に、いろいろ教えてもらった。収録した内容を動画にしたので、ぜひ視聴してほしい。

社会人だけじゃなく、いま中学生や高校生くらいの学生さんも観てほしいと思う。

○改正障害者雇用促進法について勉強したよ!第1弾 / 『空のとびかた』プロジェクト

専門職の人に教えてもらったといっても、内容はあくまでも代表の私とやり取りした範囲である。つまりこの法律について完全解説した内容を伝えられる動画ではないのだが、一般当事者の私のつたない質問に社会福祉士の人がわかりやすく答えて下さっているので、中高生でも理解できる程度の、優しい難易度の内容にできたと思う。


収録は渋谷にあるレンタルスペースを二時間だけ利用した。費用は二千円くらいだったかな。 その時間内に動画の4枚の資料の内容全てに目を通す必要があったので、ある程度の意見が出せたら次に行く、という流れで収録を進める事になった。その上で、差別や配慮の項目には多めに時間をとることにした。今年4月から障害者差別禁止法が施行される為である。

収録は一時間半程度で、勉強部分に要したのは一時間程度。残りの時間は雑談と、さらに他の障害関連の話も聞かせて頂いた。部屋を出た後も近くの喫茶店で話を続行。いやはや、本当にためになる話をたくさん聞くことができた。やはりべ協は現実の話が一番良い。

今回のブログの記事では、発達障害と就労について、動画内では語れなかった私の考えを書いてみる。


「鬱は甘え」という乱暴なワーディングがあるように、精神障害者は一部の定型から常に蔑まれた視線を浴びている。

「心が弱いからだ」「健康なくせに病気だと思いこんでいる」「なんでも病名をつける医療の欠点を利用している」「病気なんだろうけど努力を怠った結果なのだから自業自得だ」など、様々なパターンがあるのだが、その理屈の入口と出口はほぼ「精神障害に対する疑い」であり、別に当事者を傷つけたり追い詰めたりしたいわけではないというのだから、大変迷惑な言葉である。

精神障害は見た目からしても健康体である為、そのようないわれなき誤解を受けやすいのだが、その中でも発達障害は特に鋭い視線を向けられている。

鬱病などの精神障害はまだ、「暗い、元気がでない、病気だから頑張れない」といった様子から事情が理解されやすい。「とにかく病気だからできないんだな」と周囲も諦めがつくので、できない結果に対してとやかく言われることはあまりないといえる。

対して、発達障害は健常者同様に、元気であり、ちゃんと飯も食うわけで、遊びに行くこともできる。つまり健康体なのだから「普通のことができない事情」という背景が理解され難い。

「できない、わからない」から「できた、わかった」までのプロセスはおおむね下記のようなイメージだと思う。

・step1.できないと認知
・step2.努力や工夫
・step3.結果できるようになる
 

1の後は2に進み、3の結果をみて、必要に応じて2に戻る。3の結果で結論が出るまで2の状態にしがみつく。

発達障害者たちは、多くの人から、このプロセスを理解していないと思われている。理解できていないから、実行もしていない、だから当然、いつまでもできないままなのだ。きっと、甘やかされて育てられたのだ。

それは大きな間違いであると、ここで私も断言する。 そろそろ話を本題に進めよう。今回は『努力の最適化』の話である。


上記のstepルートに合わせて発達障害者の状態を言うと、

・step1が多すぎるということ
・多くの事柄においてstep2の状態であること

そして、最も大きな理由がこれである。
・step3の「結果できない」ばかりで、「結果できた」を得られた経験が乏しく、「これでOK」という感覚がわからない。

特に凡ミスが多かったり、普通はできるようなことができない当事者に当てはまることだと思う。

一般的な定型発達に対して聞こう。自分にはこれができると思えることを、一つでいいからイメージしてほしい。特別なスキルじゃなくてもいい。その「できている」と思える根拠は、「結果できた」というエピソードが支えているのだ。そして、他の知識や経験、たくさんのできたというエピソードが繋がり合うことで、万能に用いることができる「できているの線引き」も構築されている。だから貴方は大体の自分の行動結果に対し、自分で「できている、できていない」の判断をつけることができるのだ。

もし根に当たる「結果できたのエピソード」を排除してしまったら、その構造の大部分が崩壊してしまうことは容易に想像できることだろう。

だから発達障害は「できない状態からできる状態」への移行がとても苦手なのだ。

余談だが、「誉めて伸ばす」という教育方法を提唱する声を聞いた事があると思う。あれは「step1と2」の段階に問題はないが、「step3」の「結果できた」のエピソードが乏しい為に、できたの基準がわからないと、そういう習得難がある人と相性が良い。そういう意味では何割かの発達障害者にも、ある程度の効果が期待できるが、「step1と2」の認識がズレている場合もあるので全体の経過観察は必要だ。


話を戻そう。ここからが本題の本題である。

発達障害者が「step2」の状態から脱出できない、その理由のイメージはもてただろうか。

何が言いたいかと言うと、「step2:努力や工夫」の鍛錬度だけは異常に向上しているという、そんな発達障害者が多いということを、ここで知ってほしい。

最初に見せた動画の中でも少し話したが、少しでも「できた状態」に近づく為に、わずかな結果の変化も見逃さないよう、細かい変化にも気づけようになるのだ。

そういう人がもし「step3:結果できた」の基準を理解した時、それは「できない状態からできる状態」までの移行工程を、とても早く理解できる人になったことを意味するのだ。

改めて定型発達の人に聞こう。得意分野に関することなら、わからない問題が出ても、その回答を得る為に必要な工程や必要なアイテムがすぐにイメージできるだろう。「教科書のあの部分に、あの参考書に、あの時の授業に、あの情報が必要で、恐らくこうすれば」といったイメージだ。

でもそれは自分が特に精通できている範囲の中のことだと思う。 対して「step:3」が理解できた発達障害者の場合、その力が発揮できる範囲がより広い。なんせ色んなことができなかったのだから、あらゆる面で「step:2」を強いられてきたのだ。全く知らないことに対しても「step:2」をいきなり活用できると言い換えたほうがイメージしやすいかもしれない。

それは特殊能力でもなんでもない。誰もがやってる「step2」を、最適化できているだけなのだ。


それでも発達障害者の就労トラブルは起きている。当事者会などで他の当事者の話を統合した印象だが、さっき話した「step:3」が理解できた当事者も、仕事ができていない人扱いを受けているのが現状と言えば、私が想像している問題の規模がイメージできると思う。仕事ができなくても、できていても、当事者は、叱られているのである。

第一に、最初にも話した「発達障害者は努力してないイメージ」が定着しているのだが、ここでは何よりも「step2」を試行している様子が理解されない、という点を強調して覚えてほしい。それが本記事のタイトルにも掲げた「努力の最適化」である。

「step:2」の工程で、わけがわからないままもがむしゃらにやっている様子の人は、頑張っていると思われやすい。

対して「step:3」までを習得を叶えた当事者は、その「step:2」の工程を、焦らず慌てず、スマートに行うことができるのだ。その様子は一部の定型からみて、全く苦労をしていない、頑張って覚えようとしていないように見えてしまうのだ。

実際には、いま自分がどれくらいの段階にいて、あとどれくらい経験を積めば次の段階に進められて、最終的に完全習得するまでは、どれくらいの年月がかかるのか、大体のイメージがつかめているから、静かで穏やに見えるのだ。急いで回数をこなしても低い水準で習得してしまうことだってわかっている。一歩一歩丁寧に「step:2」の期間を歩んでいるのだ。

ミスをしても想定内のことなので、すぐに感覚の調整をして次のトライに移行できるわけだが、これも一部の定型からみればふざけた行為である。「仕事を覚えてる最中のミスになにも感じていない」のであって、そういう奴に対する評価は「責任感がない」である。


仕事が「できない当事者」も「できる当事者」も、別次元のロジックで活動していることがこれで伝わっただろうか。「step2」と「step3」が釣り合っていないからである。

まぁ、途中からもう発達障害に限った話ではなくなっているわけだが、当事者が仕事の習得のことで困っていた時、もしコミュニケーションの当てがないようであれば、とにかく「step3:結果できた」を指し示すことを第一に考えてみてほしい。

次に求められることは「できたの連続成功」で、それは「step2」にかかっている。鍵となる言葉は「手探りの努力」だと私は思う。自分の意識や感覚のコントロールの方法は、本人にしかわからないのだから、他の人には教えられない。そこは手探りでやるべきで、手探りでいいんだよと、安心してstep2に時間を費やせるようにしてあげてほしい。