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HyogoKurumi.Scribble

私はこの社会が省略した事柄を言語化している人です。

【第24話】5月10日(土) 雨 『希望の兆し』埼玉県道の駅「かわもと」→同県道の駅「はなぞの」

【2008年_放浪の歩き旅】
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hyogokurumi.hatenablog.com



5月10日(土) 雨 『希望の兆し』埼玉県道の駅「かわもと」→同県道の駅「はなぞの」

 今日の事を綴る前に、昨夜の事から綴りたいと思う。

―日記を綴っている間、休憩所に人はほとんど来なかった。入って来ても、パンフレットを少し見て、すぐに去っていく人ばかり。私は「旅の話屋」をする雰囲気じゃないと思い、日記を綴り終えたらすぐに寝ようと思っていた。そこへ一人の男が現れた。

 日に焼けた顔、大量の荷物、色褪せたスーツ、若干、顔の骨格の形が伺える程、痩せた顔つき、整えられていない髪形…。男は黙々と何かをノートに綴りながらカップラーメンを食べていた。……旅人? いや、スーツ姿? …長期的な取材中の人?…カメラマン…?

 私は日記を書き終えた後、休憩所の外で一服をしつつ、窓の外から男を観察した。
 ノートに何を綴っているかは分からない、けど、日記では無さそうだ。箇条書き…。コートが二着? …「ホームレス」には見えない。

 私は車で長期旅をしている人だと思い、話しか掛けてみた。

『…旅中ですか?』

『…いや、あれさ。「ネカフェ難民」ってやつ』

 男は明るい口調で応えた。私は頭の中で自分に〝げんこつ〟をくらわせた。―馬鹿っ、何故気づかなかった。

 私はこの男と喋りたいと思った。

 私はまず、旅の目的をすべて明かした。物書きになりたいという事、これまでの人生で抱えた事、沢山の人との出会い、色々な体験をしたという事…。

『特に意識しているのが、ホームレスやネカフェ難民、あと障害者。同世代のね』

 男は「なるほど」という様な表情になり、今の自分の状況とこれまでの人生を明るく、そして真剣に語ってくれた。

 男は今、ここ埼玉県道の駅「かわもと」の休憩所を主な拠点に、ホームレス生活をしているようだ。収入は某派遣会社から廻された仕事から。
 他、リサイクルショップなどに買い取ってくれそうなゴミを売却。金のある時はネットカフェやカラオケ店で夜を明かすという。

 そして男は少しずつ、過去の事を語り始めた。

 「自業自得」な一面も多々ある…けど、それよりも私は男の「運の無さ」に興味を抱いた。男の人生は不幸と不運の連鎖で塗り固められていた。

―男は中学生の時、それまでに貯め続けてきたお年玉を使い、両親を温泉旅行へ招待した。そして両親は交通事故に遭う。顔の判別が困難な程の大きな事故。高速道路からの落下。車の円炎上。『お前のような馬鹿息子がいるから、綺麗事をしたから、お前のせいで死んだ。お前もとっととあの世へ逝け』 そう言い放ったのは「創価学会員」。男の父母も創価学会員だった。働きながらの中学生活。中卒で行き着いた職はトラックのドライバー。そして「走り屋」への憧れ。待ち構えていたパトカー。男は免許と職を失う。住み込みの仕事。そこへ現れた「顕正会」。男は関わりを拒む。しかし〝関わりのある男〟として男は職場から追い出される。金の為に家を売却。そして「ホームレス」。男は賽銭泥棒をする。いるはずのない目撃。通報、逮捕。懲役一年六ヶ月。出所後は更正施設で暮らしながら工場で勤務。貯まった貯金。アパートでの暮らし。前科持ちが明るみになりクビ。払えなくなった家賃。ホームレス。昔のホームレス時代の仲間との再開。仲間だった男からの濡れ衣。偽りの〝共犯泥棒〟。男は疑われた。振り下ろした拳。二度目の刑務所。懲役六ヶ月。そして、ホームレス…。

 その後、住み込みの仕事を見つけ、ホームレスから脱出した事も何度かあったが、寮から自転車で二時間かかる職場へ通勤する仕事を廻されたりと、辿り着いた職場はどこも劣悪な労働条件ばかりの所で、仕事を続けたくても続ける事が困難となり、〝今〟はホームレス生活をしている…。これが男のこれまでの人生だ。

 男の順応力はかなり高く、少なくとも私より協調性があり、仕事能力もある。ホームレス生活中でもリサイクルショップ等を活用し、一日に5千円~1万円程度なら稼げるノウハウの備えている様だ。人脈も多くあり、彼の知識を頼りアドバイスを求めてくる「社会人」もいるという。

―何故、この男が「ホームレス」なのだ?

 男は常日頃から求人情報誌に目を光らせている。〝今〟のホームレス状態が始まったのも2ヶ月前からの事で、条件の合う職場さえあれば、明日にでもホームレス脱出かもしれない。

―この男には職場を選択できる能力がある。また劣悪な環境に行き当たり、そこで無駄な労働に汗を流すくらいなら、寝てた方がマシだ。今はこのまま慎重に職探しをした方が良いだろう。この男にはホームレスという状態でもそれが出来る能力がある。

 私はホッとした。この男は明るい。たくましい。自分なんかよりもずっと…。

 男は私と言う人間と出会えた事がよほど嬉しかったのだろう。コンビニでコーラを奢ってくれた。私は男に旅の話屋で頂いたお菓子などを分け与えた。休憩所は賑やかになった。


 私は悩んでいた。男はゲストハウスの事を知っているのだろうかと。もしかしたら、少い予算で住めるシステムがある事を知らないんじゃないかと。私は〝遠廻し〟に確認した。

『住む所が無い状態でも、派遣会社って所は働けるものなの?』

 男は「住民票」を身分証明書として活用しているという。男は〝住民票の取り方〟やそれに関する手続きのシステムのほとんどを理解している様だ。

―身分証明書がある!

 私は「ゲストハウス」の存在を教えた。男はゲストハウスの存在を知っている様だったが、身分証明書と少ない保証金だけで入居できる事や、ドミトリー(相部屋)なら3万円程度の家賃で住める事などは知らなかった様だ。…もう一押しだと思い、私はゲストハウス探しの時に利用したサイトを携帯電話で開き、室内の画像などを見せた。

『…こ、こんなに綺麗なの!?』

 男は今にも飛び上りそうな程の笑顔で喜びを表わにした。

  ―これで良い…!この人は住み込み等ではなく、自由な環境化でその能力を発揮するべきだ。

 そして男は何かを思いついた様だ。

―あぁ、理解っている。私も言おうとしていたんだ。

『やりますか?』『やっちゃうか(笑)』

 私と男は握手を交わした。そして成功を誓い合った。

 私の「旅の日記」と「彼の人生」の本…共同出版だ!

 その後、お互いの本のストーリー構成やゲストハウスに住むまでの流れや、その後の仕事の事など、現実的な話をした。なんてことはない、彼はその気になれば今の状態でも月に10万~20万も稼ぐ事が出来る。私よりも読書家で、私よりも博学だ。必ず成功する…!

 重い話も一段落し、私は「バケツ」を持ってコンビニへ向かった。今の私に出来る事はこれくらいだが、これが必ず役に立つ。私はバケツの金で、彼に「ノート」「シャーペン」「シャーペンの芯」「消しゴム」を買い与えた。

―道の駅アグリパークゆめすぎとで出会ったバイク旅の若者よ、これで良いよな?

『今の私にはこれくらいしか出来ないが。貴方はこれを使って今までの人生を〝まとめ〟るんです。本にする為に。…今までの自分の人生を、商品と考えるんだ!』

 私は冷静に力強く、男に言葉を与えた。
 男は頷いた。『あぁ、わかっている』と聞こえた様な気がした。

 そして、遅れた自己紹介をし、コンビニで買ってきたビールで乾杯をした。…この時のビールの味は一生忘れる事は無いだろう。

 以降、男の事は「K」と記す。

 その後、「K」と色々な話をした。私がこの日、道の駅「かわもと」まで来たのは「おかべ」で旅の話屋をしていた時に話していたおばさんが車で送ってくれると言ったからだ。

―「めぬま」で喋ったおじさんが、「おかべ」は警備が厳しいから野宿は難しいかもしれないと言ってたんですけど、裏のグラウンドや公園で野宿出来そうなので大丈夫かなと―

―なんだったら「かわもと」まで送ってあげようか?

…断る必要も無いと判断して私は送ってもらう事にしたのだが、Kいわく、もし「おかべ」で野宿をしていたら即住民に通報されて、警察に職務質問を受けた上に荷物を全部調べられていたとの事。危なかった。

 さらに、意外な事実が明らかとなった。

『その少年…俺も会ってるかも』
 私が「浜松」で保護した母親に置き去りにされたという少年に、Kは会った事があるというのだ。いやいやまさかと思いながらも確認してみると…。

 私 / K
・年:小学四年生 / 今から2年前で小学2年生
・場所:浜松 / 浜松
・状態:置き去り / 置き去り
・結末:30分経っても迎えは来ずコンビニに預けた。 / 母親が迎えに来たのは翌日の早朝。Kに対し「余計な事しないでください」と母親はKに礼も言わずにそう言い放ったという。

 あぁ、もう、これは同じ子だとしか思えない。
 Kは火事の中に飛び込んで子供を助けた事があったりと、勇気ある青年だ。過去にいじめられた事があり、いじめ問題にも強い関信がある様だ。


 私はKと一緒に峠を越えたくなった。

『よかったら、一緒に行かない?』

『あぁ…、おもしろそうだな!』

 一時の間だけど、旅仲間が出来た。

―K。年齢30歳。ホームレス。
 火事の家から子供の救出。体で刃物を刺される等の凶悪なイジメ。自分が招待した旅行で両親が事故死。睡眠薬による自殺未遂。二度の刑務所暮らし。宗教団体との戦い。ホームレス生活。

 某大手電気会社、車体の組み立て、ホテルマン、ガードマン、食品製造…豊富な場数により培われた順応力の高さはホームレスという状態であっても収入には困らない程で、一日に数十万円稼いだ事もあったという。

 2008年5月9日、派遣会社から廻された仕事が急にキャンセルとなり、当てにしていた収入が消えた為、ネカフェに行けず、野宿の際、主に利用している道の駅「かわもと」に行き、そこで私と出会う。

―現在、5月と6月中をホームレス生活の最後の月とし、私と峠を越えた後、金を集めてゲストハウスに入居し、私の紹介した会社で働きながら自分のこれまでの人生を本にする為に、私と行動を共にする事となった。

今日のルート│埼玉県道の駅「かわもと」→同県道の駅「かわもと」
残金│11733円・峠に行くので金を下ろした。通帳120153円・Kは無一文だったので2500円「貸した」
バケツ│・450円
イニシャル│+1人(26人+1匹/100人) ・K



■写真
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■実際の日記ページ
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