HyogoKurumi.Scribble

私はこの社会が省略した事柄を言語化している人です。

【最終話】5月11日(日)→5月12日(水) 『焼き芋パーティー』→埼玉県道の駅「はなぞの」→同県秩父駅前スカイラーク

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5月11日(日)→5月12日(水) 『焼き芋パーティー』→埼玉県道の駅「はなぞの」→同県秩父駅前スカイラーク

―眠いのに眠れない。また地震でもあるのかね。
 Kは歯ぎしりを立てながらグースカ寝ている。私は休憩所から外に出て、駐車場の外灯を眺めた。

 いつまで見続けても飽きない、オレンジ色の光。白色の外灯からは感じない、穏やかな気持ちにさせてくれる。

 ふと、休憩所内に目をやると、さっきまで横になっていた「老人」が寒そうに体を手でこすっていた。私は温かいコーヒーを2本買い、老人のいる席へ座った。

『これ、どうぞ』
 私はコーヒーを差し出した。老人は何かつぶやきつつ、コーヒーを受け取った。
 そして老人は語り始めた。

―何を喋ってるんだろう…。
 老人の言葉は全く聞き取れなかった。私は無理に聞き取ろうとはせず、老人の顔を見つめ続けた。

 老人はテーブルの上に置いてあるシケモクを吸い始めた。私は「バケツ」の中にあるタバコを差し出した。

『これメンソールですけど』
『……いいよ』
 老人は断った。始めて聞き取れた言葉だった。私は何も言わずに老人の前にタバコを置いた。

 老人は小刻みにコーヒーを口へ運んだ。

―普通ならとっくに飲み干している回数だ…。

 大事に飲んでいる様には見えなかった。そして私の差し出したタバコに火を付けた。

―あんちゃん。仕事するようになったら。カット屋さん。切ってくれるんだ。あそこの肉旨いのかな。3万円。持っていくんだ。

 僅かに聞き取れた言葉から老人の話を推測すると、主に今の自分の事を話していたと思われる。

―この人が、一体何をしたっていうんだ?…「何もしなかった」から…か?

 老人の語りが途切れだした。私は『おやすみなさい』と言い、席を離れた。

 私は考えた。
―私のこの旅は、やはり「ホームレス」との関わりが重要だ。
 今は崎玉県の道の駅をすべて巡る様にルートを組み立てている。それをする必要は?…それが終ったらどうする?
 歩き旅は楽しい。歩くのは好きだ。道の駅では色々な人に出会える。
 旅の話屋のスタイルは完成した。もう考える事は無い。
 私が今、一番生かすべき事は何だ…。

 崎玉県の道の駅を巡る旅が終ったら、富士の樹海か、どこかの砂浜でテントを張り、「一人」で頭の中を整理しようと思っていた。

―自分は何を考えていたのだろう。旅中に得た情報は膨大、確かに頭の中を整理する時間は欲しい。でも〝今〟一人になる事には何の意味も無い…。

 朝方の5時頃だろうか。ようやく眠気を感じ始めたので、私は眠りに付いた。

―8:00。2~3時は眠れただろうか。洗顔をし、荷物を整え、地図を開いた。…やはり歩きでは遠すぎる。電車賃が痛いが「みなの」駅まで行くべきだ。
 起床したKと今後のコースを確認し合い、出発した。

 道の駅の「龍勢会館」、「両神薬師の湯」、「大滝温泉」、「荒川」、「ちちぶ」、「あしがくぼ」…。秩父の道の駅を巡り、道の駅「おがわまち」でKと別れる。Kと一緒にこれまでの事とこれからの事を考えながら一緒に峠を越えるんだ。

 「寄居駅」に着いた。少し腹に何かを入れておこうと近くのスーパーでパンと飲み物を買い、休憩所で食べた。そしていざ出発しようとしたら、Kが何か慌てている。

 慌てている理由はすぐに分かった。昨夜渡した1000円札が無いのだろう。Kはスーパーに引き返したが、見つからなかったようだ。

『俺がレジ通った後、次のおばさんがレジの所で屈んでたってレジの人が言ってた』

 Kは盗まれた可能性や、落として盗られた可能性を固持し続けた。

―違う…っ! 考えるべき事は、そんな事じゃない。

 大きな口を開けているコートのポケットに札を入れていた事を、誤ちだったと認識する事!小銭も一緒に入れていたのなら金を取り出す時にハラリ…と落ちてしまってもそれは当然の結果!

〝運が無い〟と言い出したKに、私は〝運のせいじゃない〟と強い口調で言った。Kは『ゴメン』と謝った。

 この出来事をきっかけに「K」という人間の内部構成が把握できた。両親を亡くし、自分の力で生きていく事になった状況で育まれた「行動力」、そして「記憶力」と「知識」。Kはこれらの能力が抜群に高い。しかし「計画性」と「管理能力」が低い。それは仕方の無い事。その日一日を無事終えられるかどうかも定かでは無い日々。一年後、五年後…ずっと先の事を考えている状況、状態ではなかったのだから。

…正確には「低い」ではない。高すぎる「行動力」と「記憶力・知識」と比べれば「低い」であって、「計画力」と「管理能力」は平均値の圏内。だだ「ホームレス」という状況から脱出するには、並の能力では足りない。恐らく「K」の運の無さ「行動力」と「記憶力・知識」に比べ、他の能力が低すぎる事から生じるバランスの悪さと、状況が求める能力に足りていない事が主な原因…!

 そして…若干の奇行気味な素行。例えば「ドーン」「キーン」等、会話の中に〝効果音〟を口で表現しながら喋るタイプがいるが、Kの場合は体で表現する。

 驚く話の時には目を大きく開き、思い返す時には顎を腕に乗せ、斜め上の方を見る。とにかく体全体を使って話を表現するのだ。話し方にも偏りがあり、話が起点に差し掛かると『どうなったと思う?』『どうしたと思う?』と、こちらに尋ねてくるので、会話というより一方的に話し掛けられている様な状態になる。盛り上げの為か、言葉の合間に1秒程のウェイトを置くのでテンポがあまり良くない。

 アニメや漫画のキャラクターの様な話し方といえば、想像し易いだろうか。発達障害の可能性を考えたが、Kにそれを当てはめるのは難しい。適切ではないと考える。Kはまだ中学生と言う成長過程の中で両親を悲惨な事故で亡くしているのだ。一般論的な心理解釈を基準に考えるのは違う。だが、多くの性質は生まれ付きの傾向も絡んでいると推測できる。

 ―今のKは健常者と発達障害の中間の様な状態…。

 Kも私と同じくアニメや映画、漫画やゲームが大好きだ。恐らくK〝も〟それらの世界から多くの事を社会性の基準として学んできたのだろう。

 Kの生活能力は高いので、社会復帰の為に必要な材料はごく僅か。〝前科有りでも良い〟という住み込みの職場があれば良いのだ。だが、その後の人間関係で支障が出る可能性は極めて高い…。

 私が考えている間もKは失った1000円札の事を残念そうに思い返していた。しかし表情は明るい。

―思い返してがっかりするだけじゃ駄目なのだ。

 私は〝Kをパートナーから外す〟という最悪の状況も想定した上で〝昨夜〟の事を踏まえてKに注意した。
 Kは私が用意したノート等をテーブルの上に出しっぱなしにしたまま寝ていたのだ。そして、〝とても〟大切なお金を大切に扱わなかった。

 Kは納得してくれた。…良かった。繋がった。

 とりあえずKから小銭を回収した。が、無一文のままにしておくわけにもいかない。これから我々が辿る場所は山の中なのだ。私はKに「130円」を渡した。

『これは万が一お互いに何かあった時の為のお金です。』

『120円は水分補給。10円は「電話」代です。』



 じ~…。

『…そのポケットにしまうな!(笑)』

 Kは胸ポケットに入れ直した。…Kなりのジョークだったのだろうか。

 「みなの町」までの電車旅。ことごとくシャッターチャンスを外す私を見てKは笑っていた。また少し親睦が深まった様な気がした。

 「龍勢会館」までの道のりは長かった。県道37号線に辿り着けず、みなの駅の周りをぐるぐるしていた。龍勢会館へと続く道まで車で送ってくれたおじさんに出会えなかったらどうなっていた事やら。

 どうやらここは時代劇映画の撮影にも使われた場所らしい。
 茶店の前を通ると、店のおじさんが話し掛けてきた。旅人と会えた事が嬉しかったのだろう、店内で温かいお茶を出してくれた。
 今日は小雨が降っているせいか少し寒かったのだ。とても嬉しかった。

 私とKはお店の人達と旅の事や秩父の事などを話した。
 今日の様な寒さはこの辺りでは珍しい様だ。私は何か注文しようと思ったが今日はもう店じまいをしている所で調理ができないらしい。すると、私が注文しようとした料理をお店の人が出してくれた。

『まだ少し温かいよ』
 多分、売れ残りだったのだろう。それでも十分美味しかった。 

 茶店を後にし、敷地内を一回り。ベンチに腰掛けて「旅の話屋」の看板を掲げたが、お客は来なかった。私は店じまいをし、少しボーッとした後、Kと食事の相談をした。

―食パンさえあれば…。
 実はさっきの茶店でおじさんは「ハチミツ」までくれたのだ。
 これをパンに塗って食べたい。しかし、コンビニはここから歩いて20分程の所にあるだけだった。戻るのもめんどくさい。

 道の駅の農産物店に何かハチミツを活かせそうな食べ物はないかと品物をみていると、「ジャガイモ」と「サツマイモ」を見てピンときた。
―これで〝焼き芋〟はできないだろうか?

 私はKに提案した。Kはアルミホイルさえあれば作れると言う。…何度かやった事がある様だ。

   相談した末、Kがひとっ走りコンビニまで行き、アルミホイルを買ってくる事になった。私は「ジャガイモ」と「サツマイモ」を購入し、Kの帰りを待った。

 川原まで下りる所を探すのに時間を食ったが、なんとか到着。Kは早速、枯れ葉集めを始めた。私は石で囲いを作ったが、「風が無いから別にいらない」とKは言った。

 私はKの作業をしばらくの間見ていた。
 Kはどこからともなく持ってきた大量の枯れ草を束ね、ノートの不要なページを破り、ライターで火を付けた。
 そして火の付いたノートを枯れ草の奥に入れ、息を吹きかけた。
 あっという間に火は炎となった。

 Kの作業はとても速やかに行われた。たかが焚火とはいえ、Kの一つ一つの行動は知識の固まりだった。
―すごい…。

 そして「焼き芋」は完成した。ホカホカの焼き芋に、茶店で頂いたハチミツをかけ、ゆっくりと一口目を口に運んだ。

『うまっ!』
『うめえ!』

 芋の皮がススで少し黒っぽくなっていたけど、そんなの関係ない。
 美味しい…!美味しい…! 夢中で食べた。

『もう一つ焼こうか?』

 2つめは私が何気無く拾ってきた八方スチロールがよく燃えてくれたお陰ですぐに完成した。

 私は川原に来る途中でKに言い掛けた事を話した。

『私の旅は貴方と出会う為の旅だったんです』

 私は七月から始める予定だったゲストハウス生活を、埼玉の道の駅巡りが終り次第、早速始める事にしたのだ。

―今、活かすべき事。その中心にあるのはKと出会えた事。道の駅巡りは楽しい。でもそれはこの旅が終わった後でも出来る…っ!私は旅を「歩き旅」―「ゲストハウス」―「最後の旅」と分けた。最初の「歩き旅」のエンディングポイントがこの「K」との出会いだったのだ!

 食事の話が終わった項、辺りは暗くなっていた。私とKは寝床の確保の為、道の駅の駐車場へ赴いた。
 テントが張れそうな場所はいくらでもあった。しかし、問題が一つあった。今日の日記をどこで書くか、だ。
 今日は沢山書く事がある。出来ればファミレス等、椅子と机、明かりがある所でじっくりと書きたい。

 ここの休憩所にはベンチしかない。さてどうしたものかとKと話していると、ライトを持った二人組がむこうから歩いてきた。

K『見回りかな?』
私『…いや、違うよ。あれは…』

 夜のウォーキング中?だろうか。歩いていたのは二人の女性だった。
 私とKは二人に声を掛けた。

『この近くに24時間やってる〝ファミレス〟ってないでしょうか?』
『あー、ここ真っすぐ行くとセブンイレブンがありますよ』

…ちっがーう! コンビニじゃねぇ。
『…いえ、〝ファミリーレストラン〟ですっ』

…どうやらこの辺りには一軒も無く、「秩父駅」辺りまで行かないと駄目らしい。代わりに大きな銭湯の場所を教えてもらったので、そこまで行く事にした。もしかしたら宿泊も出来るかもしれない。しかし、そこは夜11時には閉まるスーパー銭湯だった。

―風呂と日記が書ける…悪くはない。しかし明日には「両神薬師の湯」で風呂に入るのだ。別に今日入らなくてもいい。欲しいのはじっくりと日記か書ける場所。一人1500円程度で宿泊も出来れば考えるが、それが出来ない以上、ここを利用する価値は今は無い。…やっぱりファミレスだ。

 銭湯の駐車場から外に出ると、中年の男達が楽しそうに喋っていた。酔っ払いだろうか。念の為「ファミレス」の事を尋ねてみた。

『あー、ここ真っすぐ行くとセブンイレブンがあるよ』

―また「7・11」か!崎玉県の秩父人、おもしろすぎるよ(笑)

 Kと相談した結果、とりあえずその「7・11」まで行ってみる事にした。そこで状態と状況を把握し決断…。本当にファミレス等、通合の良い場所が無さそうならそこのスーパー銭湯に戻って風呂入って近くの川原でテントを張る、という事にしたのだ。

 「7・11」までの道のりは果てしなく遠かった。まさか歩きだと思わなかったのだろう。引き返すのも難しい距離を歩いた。標識は無く、その「7・11」も見えない。自販機に記載してあった町名から大まかな位置と進行方向は分かったけど、曲がりくねった峠道がどこへ繋がっているのかはさっぱり分からなかった。すると、Kが何かに気がついた。

『あれ、あそこに見える「7・11」って…』

 Kは龍勢会館から20分程の所にある…アルミホイルを買ったあの7・11があれじゃないのか?と言う。

 さらにKは予想を続けた。「龍勢会館」へ辿り着くまでの間に、二軒の7・11に立ち寄っているのだけれど、最初に立ち寄った方の7・11に辿り着くのではないか?…と。

 私の予想はこうだ。現状はほぼ真南に進行していて、このまま歩けば国道299号線に出る。国道に出られれば「7・11」も関係ない。ファミレスじゃなくとも24時間の漫画喫茶かネットカフェ、カラオケBOKでも良い。何かあるだろうって…。

 峠道を歩き始めてから、1時間程度は歩いただろうか。
 …Kの予想が当たってしまった。つまり我々は「めぬま駅」に戻る様なルートを辿ってしまったのだ。しかも大きな遠回りをして。

―理想は299号線沿いでファミレス等に立ち寄り、翌日はそのまま国道を辿って両神まで行く事だった。
―今日はこれ以上移動に費やすべきじゃない。外灯もほとんどない、暗い、雨もまた降ってくるかもしれない。このままじゃ明日のルートも狂う…。

―まてよ、両神にこだわる必要はないんじゃないか?
 ここから龍勢会館以外で一番近い道の駅は「ちちぶ」。反時計回りの様に辿るつもりだったコースを、逆にすれば良いんじゃないか。…いや、その通りだ。

『Kさん、今日はなんとかして「ちちぶ駅」の辺りまで行きましょう』

 そうなのだ。次は絶対「両神」なんて決まりは無い。

―またやってしまった。

 自分は何故こうも遅いのだろうか。これまでもそうだ。「状況」が変わりつつあるのにそれを感じ取れない。やっと把握するのはどたんばになってからだ。
 「ちちぶ」の道の駅から回ってもいいじゃないか。もっと早く気がつけただろう?「はなぞの」で話し合ってる時にさ。

 反省は後でするとして、問題はどうやって「ちちぶ」まで行くかだ。私の持っている「全日本道路地図」を見ると、6km…5km?順調に行けば一時間半もあれば辿り着けそうだ。しかし、コンビニで地域別の詳細地図を見るとどうみても2時間以上コース。
―時刻は10時。該当は少なく標示も少ない。道中で現在位置を見失う可能性もある。そして気になる降水確率。高くは無いが少なくもない。駅までは遠い。バスは…一台も見ていない。走ってないのか。

 歩くか、ヒッチハイクか、タクシーか。…いや、歩きは危険だ。
 Kと相談し、10時半までここのコンビニでヒッチハイク。駄目だったらタクシーを呼ぶ事にした。

 運転席と合わせて席が2席しかない車や、こちらは男二人という事もあってか、女性には声を掛けづらい。結局10時半が過ぎても声をかけれたのは一組だけ。

 ―さて、どうする。

 外灯も少ない山中の夜道。我々の格好からしてもしパトカーでも通ったらほぼ間違いなく職質を受ける事になる。ここは人通りが少なすぎる!そして雨の可能性。降ってもおかしくない。

 ―いや、待て。何を考えている。なんだこれは。どういう状況だ。「秩父駅」周辺にはファミレスがある。だからそこまで行くんだ。何の為に?

 何の為に?

 日記を綴る為…違う! もう状況は変わったのだ。

『Kさん。秩父のファミレス…そこで夜を明かしたら、山を下りましょう!』

『私達が今しなければいけない事は、〝速やかに本を作る環境を整える事〟です!』

『山の温泉に入ったり、一緒に旅するのは楽しいけど、それは落ち着いてからでも出来るじゃないですか』

 これからやるべき事が分かった。そして、旅中にずっと抱えていた悩みも解決できた。

「K」は身辺整理と金策を同時進行でおこない、ゲストハウス等に入居し、そこで仕事を見つけ「本」の為に執筆活動を始める。

 その状況を一日も早く叶える!

「私」は一日も早くゲストハウスでの生活を始め、速やかに仕事を見つけた後、ボランティア活動等を通して見たい現場を見る。そして日記を綴る。

 確実にその状況を整える為にも、これ以上旅の資金を使うべきじゃない。万が一、住む所が見つからなかったらアウト。住む所が見つかっても仕事がみつからなかったら、やっぱりアウト。…その間、旅の資金もどんどん減っていく。

 道の駅を一緒に巡り終えた先にあるものは? それは「達成感」だろう。
 …ふざけるな。崎のビジョンが見えた今となっては、それはただの願望だ。

 もういい。

 Kは少し残念そうにしたが、
 すぐに怖い表情(冷静な感じ)になり、頷いた。
「うん、その通りなんだよな」って聞こえた様な気がした。

 そして、公衆電話からタクシーを呼び、「秩父駅」まで向かった。

『さっきね、「のだめカンタービレ」の作者の父親を送っていった所なんですよ』

 タクシー代が痛いなぁ…という寂しい気持ちはタクシーの運転手の明るい話で一気に吹き飛んだ。すっげー、「のだめ」の作者…の父親だって!(笑)

 ―「秩父駅」前にあるファミレス到着。
 タクシー代は4000超えと大きかったが、Kには美味いものを食わせてやりたい。しばらくは食えないだろうから。
 特に深い意味は無かったけど「敵に勝つ」とかけてKはチキンのステーキ、私は〝とんかつ〟を注文した。

『今、楽しい?』
『…楽しいよ』
 Kはゆっくりと強く頷いた。
 大きなオーラを感じた。…エネルギーの塊。でもさっきの「楽しいよ」って言葉は、そのエネルギーを無駄にしないように、今は押し留めた様な…。


―そうだ、分かっているな。執筆なら今のホームレス状態でも可能。でも貴方はそうじゃない。自身もホームレス状態でありながら何人もの人をホームレスから脱出させ、救っている。もう自分の番で良いでしょう。屋根のある所で生活するんだ。夏は涼しくて、冬は暖かい。少し仕事に汗を流しながら一年かけて本を完成させるんだ。

― 一年後、一緒に出版社へ行こう。

 朝、始発の時間になったので駅に向かった。

『これからやるべき事、わかってますね』


 私の眼を真っすぐ見ながらKは力強く頷いた。私は言葉を続けた。

『速やかにお金を溜めて、ゲストハウスに住むんです』
『飯を食う時も風呂に入る時も寝る時もすべてを本の完成を基準に考えるんです』
『マイナスになる事は一切しない!』
『貴方は自分の為、私は私の為に本を創ります。自分の本の為にどうぞ私を利用してください。その知り合いのテレビ局の人に話して私と連絡が取りたいと言ってきたら、どうぞ私の連絡先を教えてください』

 そして、私はKに「2500円」を渡した。

『ゲストハウスに行く時、これでお風呂に入って綺麗な身なりを整えてください』

 本当はもっと渡したかったけどこれ以上は難しい。ゲストハウスの入居費用だってサイトで把握しただけであって、正確な事はまだわからない。

『頑張れよ』

 強い握手を2度交し、Kと別れた。

 今日は5月12日。旅に出発してから丁度1ヶ月目だった。


■写真
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■実際の日記ページ
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