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2013年原付カブの旅 最終話「帰り道 後半戦」

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六日目

 5時半。予定通り起床。
 薬のお陰か、ぐっすり眠とれた。目覚めもバッチシ。眠気も全く残っていない。

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 出発前に空の様子を撮影しようと振り返ったら、富士山がそこにあった。今回の旅での初富士である事に気づく。そういえば、富士を見ていなかった。
 俺はとても得をした気持ちになれた。

 泣いても笑っても今日が最終日である。
 家の最寄り駅までは150kmほど。
 時速30kmMAXで走れれば5時間だが、倍以上の見積もりで考えなければならなことは十分にわかった。
 俺は12時間後の、夕方18時までに到着することを目標にした。

箱根峠

 箱根峠までの道のりはバイパスを避けて県道の細い道を走った。沼津バイパスを選べばよかったのかもしれないが妙に交通量が多かったのだ。県道も車の往来が激しかった。
 途中のコンビニで朝食を食べ、三島市に突入した頃には道路は車で寿司詰めのような状態になっていた。こんな朝早くからどこへ行くのかと考えたが、よく考えてみたら今日は平日月曜の朝であった。

 行きに箱根峠を走った時は真っ暗だったので、俺は峠との境に当たる部分などを全く把握していなかった。
 とりあえず間違えて新道に入ってしまわないよう、看板や標識には注意した。

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 順調に登っていたところで自転車を押して歩いている二人組みの若者をみつけた。
 俺はすれ違い際に「頑張れ~!」と声をかけた。若者も笑みとガッツポーズを返してくれた。
 五日前、ひんひんと半べそをかきながらここを走っていた俺はもういない。
 俺は最高のコンディションで箱根峠に突入できた。
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 上り坂はやはり苦手だった。バイクのエンジンにも負担がかかるかと思うと走っていてもあまり楽しくなかった。ただ山の空気はとても心地よかった。薄っすらとかかる雲が日差しを防いでくれたのでとても助かった。雨も降りそうにない。

道の駅 箱根峠

 8時半。行きはスルーした『道の駅 箱根峠』で休憩した。峠はまだ長い。店はまだ開店前だったので柵から見える景色を眺めるくらいしかやることがなかった。
 ナンバープレートをみた他のライダーさんに声をかけられたので少し談笑した。準備不足だった上に無茶なスケジュールだったことを話した。人と話せばそればっかりだ。もはや持ちネタと化していた。

 そこから少し走ったところで箱根の遊覧船をみた。『海賊船』なんて看板に書いてあったもんで思わずバイクを止めてしまったわけで。

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 猫!

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 猫! 猫!

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 猫にゃーーーーーん!

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 はい、これが海賊船です。
 いやぁ、堪能しました。猫を(´∀`*)

 癒されたところで再出発。
 ずっと芦ノ湖が見えていることに驚いた。行きのあの夜は、全く気づかなかった。暗くて見えなかったのだ。
 30分程走ったところで、なんとなく景色がいい気がして撮影。

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 うーん、別にそうでもないか。

 交通量はそこそこで、自動車やトラックはあっちから避けていくのであまり気にせず走り続けることができた。
 それよりも寒さが気になった。前日の雨のせいで山全体が冷えているような気がした。

ラストスパート

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 9時40分頃、何事もなく箱根峠を抜けた。俺は適当なところでバイクを止め、背景になった『箱根湯本』の町を撮影した。
 通り抜けただけだけど自然に囲まれた静かな町のように感じた。いつか観光で来てみたい、そう思った。

 ここから先は行きと同じ、東海道に乗って小田原市の町を走り抜けた。
 道中、パンクの修理をしてくれた店の前を通ったら、あの時と同じ店員さんが店の前にいたのでバイクを止めて再開と別れの挨拶をした。
 少しだけ苦労話などを談笑した。本当にお世話になりました!

 平塚市の手前で俺は左折した。行きと同じなら1号線から134号線、そして129号線にのって北上するんだけど、その手前で県道63号線に入ったのだ。

 この道がいいのかどうかはわからないが、少なくとも国道に乗ればまた行きと同じように交通量に悩まされることは目に見えていた。
 だからこっちの県道のほうがスイスイ進めると考えたのだ。
 その予想は当たっていた。一部の川の橋のところで階段がルートになっていた為、別ルートの検索を余儀なくされた場所もあったが、基本は道なりに走るだけなのでとても楽だった。
 道中、目にゴミが入ってそれがなかなかとれなくて、その時ばかりはかなりしんどかった。

 厚木市からは徒歩ルートをやめて普通に自動車ルートを参考にした。徒歩だと国道含め大きな道路のないエリアを突っ切るルートだったのでちょっと不安だったのだ。何かトラブルが起きたら不便な地域なのかもしれない。
 行きに利用した大和厚木バイパスを利用してずんずんと進む。交通量は多かったけど原付は他にも走っていたので不安はなかった。自動車の流れに阻まれて速度がでないなんてこともなかったので、そのまま地道に家を目指した。

 家が近くなってくるにつれて、景色かかぶるせいか、出発した日のことが記憶に強まっていった。
 この辺りを走っていた時の俺はまだ余裕綽々だった。それから先に待ち受けている困難なんて予想だにしなかった。
 でも俺は乗り越えた。こうして帰ってこれたのだ。
 家に帰って、嫁が仕事から帰ってきたら、たぶん俺は泣きついちゃうと思っていたけど、もうそんな軟弱な気持ちはどこにもなかった。
 嫁は仕事で、俺のほうが先に家に着いちゃうから、普通に「おかえり」と言って、元気な姿を見せよう。俺はそう思った。

 そんなわけでこの最終日は今回の旅で。一番順調に進んだのだった。

 15時27分、俺は無事、家に帰ることができた。

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 到着時のメーターがこれ。15040.1km。
 出発時から増えた距離は876.2kmだった。

 精神的に盛り上がることもなく、俺はカブの距離メーターをポンと叩いて「おつかれ」と言ってあげた。それから自分に「おつかれ」と心の中で言った。先にバイクの方におつかれと言ってあげることは、五日目の昼頃になんとなくそう決めていた。
 部屋に戻った俺はコップ一杯のアイスミルクコーヒーをつくって、それを飲みながら荷物を展開した。その後は溜まっていた自営の仕事の処理に取り掛かった。旅中に溜まった仕事の中で、どうしてもこの日の夜までに終わらせたい案件がいくつもあったのだ。
 そして夜、仕事がひと段落したところで、仕事を終えた嫁から電話がかかってきた。

 晩御飯はなにが良いか聞かれたので「吉牛ガタベタイデス」と言ったんだけど流石に却下となったので、近所のステーキハウスに行く事になった。
 今日は共同生活を始めてから、一年目の記念日なのだ。
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 酒と料理がそれなりに揃ってから俺は旅の話を始めた。
 箱根峠の苦労や二日目の灼熱地獄、帰りの雨地獄や、箱根峠を克服した時の気持ち。俺は全部、楽しく話していたと思う。

 実家に着いたとき、ゴールには何もないと思った。確かに、旅はゴールした後で得たものに気づける事が多いと思う。でもそれは半分正解で、半分は違った。
 放浪旅の時、ゴールなんてものはなかった。帰れるところはなかったのだ。ただどれだけ自分を理解できるか、自分をコントロールできるようになるか、そのことが全ての中心だった。
 今回の旅はあの時とは決定的に違うことがあった。それは、今の俺には帰ってくる場所があるということだ。嫁のいるところがゴールだったのだ。
 俺は今回の旅で、家庭のある幸せというものを、初めて実感できたような気がしたのだった。

 『結果よりも過程が大事』という言葉があるけど、それは『過程の間、言葉で埋められていない空白期間があるから思うこと』だと思う。俺も以前までは過程を重んじる派だった。でも今の俺は、〝過程〟も〝結果〟も、言葉で満たすことができている。今回の旅で、そのスキルは一層深まったと思う。
 今回の旅の間ずっと『自分は旅なんか好きじゃなかった。もう二度としない』と思っていた。放浪旅の成功で、自分の中で旅というイベントが美化されすぎていた事に気づいたのだ。『現実はただの苦行、自分はもうやる必要はない』と。
 けど、この後書き日記を書き終えようとしている今の気持ちは変わっている。いつになるかはわからないけど、俺はまた一人旅に出ようと思っているんだ。
 まだ表現できていない自分の言葉が、沢山あることに気づけたから。

◆買物履歴 8月26日
 ・06:28 コンビニ ホットドッグ 缶コーヒー 308円
 ・13:19 コンビニ チキン 缶コーヒー 265円

 ・07:10 GS レギュラー 0.74L 113円
 ・09:46 GS レギュラー 0.70L 114円
 ・20:17 GS レギュラー 0.69L 108円



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