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『絶歌』読書感想文:その4――神戸連続児童殺傷事件の元少年Aは発達障害なのか?

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 その3の掲載から五ヵ月も経っていた。今まで何を書いてきたのかもはや自分でも覚えていないが、このまま読み進めていこうと思う。

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 23p~29p


 7月11日、少年Aは警察のマイクロバスに乗せられて、殺害現場となったタンク山と凶器類を捨てた向畑ノ池をまわり、実況見分を行ったようだ。ちなみに、警察が少年Aを逮捕したのが6月28日の事である。
 向畑ノ池は水がほとんど抜き取られていたらしい。実況見分の為だろうか。池の底にはザリガニやオタマジャクシ、クサガメやフナがひしめき合っていて、その哀れな状態に、少年Aは自分の境遇を重ねたという。

 僕と同じでこの池の他に居場所のなかった、汚水にまみれた無数の生き物たち……。

 無性に悲しくなり、その日の取り調べは一言も喋れなかったようだ。その様子に対し刑事はキレたという。
 「お前なんやその態度はぁ! もうええわ、ブチ込んどけ! 自分のやったことちょっとは反省せえ!」

 独房に戻された少年Aは元の日常を思い返した。タンク山や向畑ノ池、入角ノ池のほとりで独り過ごした静謐な時間。この部分の記述では、赤マルを吸っていたことも書かれている。彼は喫煙者だった。
 少年Aはこの池の事を聖域のように考えていたようだ。この世界のどこにも属することができない、たったひとつの自分の居場所。その聖域が侵された現実に、何もできない自分に、やるせなさを感じたという。
 その次の行から唐突に、自分の行動に対して疑問を投げかけている。なぜあの池に、まるで託すように凶器を捨てたのか、そもそもあの池は自分にとって、なんだったのか。

 そして少年Aの回想が始まった。小学生の頃、友達と一緒に池の周りで遊んだ記憶、仲の良かったアポロ君のこと、ダウンタウン松本人志に惹きつけられた理由など、小学生の頃のある一時の記憶が語られている。大人が子供の頃の思い出を孫に読み聞かせるように、細かい描写まで丁寧に書かれている。

 夕陽を見られる時間は短く、あっという間に柔らかな夜の闇が、ペーパークラフトのような友が丘の街並を優しく包み込んだ。

 こんな調子の文章がずっと続く。「過去の思い出を語る文章はこういう文体に書くもんだ」という、先入観ありきで書いたことを感じざるを得なかった。だから私はこの部分を記述を読んでいて、シンパシーを感じた。私が日記を書き始めた頃もよくやったことだった。そう書く以外の文書力をもたなかったからだ。

 学年が上がって友達のメンツがかわっても、アポロ君との交流は続いたようだが、彼の周りに人が集まれば集まるほど、精神的な距離を感じるようになったらしい。彼のいる明るい場所に自分は属することができないと、心境が綴られている。そして、何も考えずに楽しく遊べていたあの頃の思い出の場所、それがタンク山や池だった。これが、少年Aの中で事件現場となった山と池が聖域化されていった経緯らしい。

 私も中学生の頃、クラスメイトとうまく関係を築くことができなかった時に、自分の居場所を求めた事があった。そうして思い浮かぶ場所は決まって、小学生の頃の思い出の場所だった。自転車を30分かそれ以上漕いだ先にある川で友達と釣りをした記憶。自然の事はその川で学んだ。その川で夕陽を見ながら黄昏ている今の自分をよく空想した。中学生になってからは一度も行ったことがないのに「たまにあの川に行って夕陽とか空を眺めてる」と友達に話したことがあった。友達はすぐに「嘘や」と言い返した。たしかに嘘だったけど、当時の私にとって日常のストレスから生じる空想は現実と同じくらい価値のあることで、実際に嘘かどうかも確かめずに嘘と決めつけた行為に対し、私は嫌な気持ちになった。
 それも数あるエピソードの一つなのだが、私はとにかく理解されない事が多かった。自分との相性を加味して付き合い方を分ければいいのに、当時はそういうことができず、全ての交流に対し一つの自分だけを見せていた。だから私の日常は「自分と合わないクラスメイトに囲まれている状態」という認識だった。

 もしかしたら少年Aも自身の日常を、そのように認識していたのではないだろうか。ここまで読んだ印象では、社交性が高かったようには思えない。


 次節は『それぞれの儀式』。


暗い森―神戸連続児童殺傷事件

暗い森―神戸連続児童殺傷事件

絶歌

絶歌


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