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<4> 戦闘 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

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前話 <3> 現場 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説 - HyogoKurumi.Scribble


<4> 戦闘

「うふふっ、踊ってくださいねえ!」
 しなやかな両腕に抱きしめられていたライフルがその瞬間、野獣のような咆哮をあげた。
 三点バーストで放たれる連弾をロール動作で回避したエーテル。それをみたメイドロボは、瞳孔を開かせながら心底楽しげに言った。
「いいですねえ……とっても楽しいですよお!!!」
 エーテルはカウンターキッチンを背にして身を潜めた。
「なんなのよ、このイカレ女は!」
エーテル、ここでの戦闘は避けるべきだ。現場が破壊されてしまう。とにかく、室内から出るんだ』
「わかってるわよ!」
 立ち上がって通路に向かいながらメイドロボに発砲。

 一発はボディへ。もう一発は彼女のライフルへ。
 ボディへの攻撃は弾かれてしまった。装甲の堅さは並みではない。

 ただ、ライフルは破壊することができた。
「あらあらあら、仕方ないですねえ」
 武器を失ったにも関わらず、彼女の表情は曇らなかった。
 また歪みの中に手を突っ込む。すると今度は、筒状の砲身を取り出した。
「これなら簡単に壊れないと思うんですよお……うふふっ」
 それは――ガトリング砲であった。エーテルが今の状況を夢であることを願う前に、敵がトリガーを引いた。
「これが当たったら穴だらけになっちゃいますよお! 血がいーっぱいでちゃいますよお!」
「ちぃ!」
 無数の弾丸が悲鳴のような射撃音と共に速射された。

 そのふざけた言葉とこの状況に思わず舌打ちがでた。

 弾の壁に進路を阻まれたエーテルは、スライディングで直撃を回避、同時にフォトン刃のナイフを投擲した、が
「……そそりますねえ」
 ナイフは右腕の肩関節部に突き刺さったが、メイドロボはそれをまた易々と抜き捨てた。

 その一瞬の静止を利用して、エーテルはコミュニケーションを試みた。人違いか、誤解なのかもしれない。
「待って! どうして私を攻撃するの!?」
「どういう意味ですかあ?」
「だから、なんで私と貴方が戦わなくちゃいけないのって聞いてるの! 目的はなに?」
「なぜってえ……それはあ……えーっとお……」
 メイドロボは人差し指を口元に当てた。そのわざとらしい動作に生理的な苛立ちが走った。
 直後に口元がニヤリと笑みを浮かべた。
「楽しいからに決まってるじゃないですかあ! あはははははっ!」
「狂ってるわね……!」
 この状況に対する呆れと怒りで、エーテルは気が狂いそうになった。
 敵は笑いながら四方に乱射して撃ち尽くしたガトリング砲を投げ捨てると、今度は両手にダガーを持ち、接近戦を挑んできた。
 繰り出された連撃に、エーテルは回避と防御で手一杯となる

「(速いっ! 並の使い手じゃないっ!)」
「いいですねえ、じゃあこれならどうですう?」
 リズミカルなバックステップとバク転――それはまるで、ダンスのようであった。
 その想定外の動きにエーテルは一瞬、意識を奪われてしまう。
 次の瞬間にはもう、視界が天井が見ていた。

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 エーテルは、メイドロボが突進直後に放った蹴り上げをかわせず、顎に直撃を受けてしまった!

 突進時に踏み砕かれた床板の姿が威力の高さを物語る。が、それを目に留める余裕はなかった。
 意識が飛びそうになるも、辛うじて姿勢を維持する。口や鼻から噴出した血は咄嗟に手でぬぐった。
「ぶはっ……やってくれたわね」 
エーテル、いま制限解除を申請している。もう少し粘ってくれ』
「ちょっと! 勝手なことしないでよ!」
『しかし、このままでは……っ!』
「あと二ヶ月で外せるのよ!」

  ◆◇◆

 光子多感症(フォトンたかんしょう)――大気中フォトンとの相性が良すぎてしまう先天性の希少疾患である。発症率は数十万人に一人といわれているが、年々増加の傾向にある。当事者の半数以上はニューマンである。エーテルもその一人であった。
 精神や発達への影響はないが、生まれつき高威力のテクが使えてしまうも同然の状態であり、感情の昂りによってはフォトンパワーが異常暴走し、自分自身や周囲に危険を及ぼす恐れがあった。多くの場合、幼少期に発覚する。子供の近くにあったものが突然、燃えたり凍ったり、切り刻まれたりするからだ。
 発症が確認されたら年齢問わず政府施設へ入所し、そこでプログラムに沿って、フォトンエネルギーや感情のコントロールに関するトレーニングを受けることが義務付けられる。

 要入所期間は年齢によるが、子供なら数ヶ月から数年、成人者なら概ね一年間。その間、一度も暴走しなければ退所できる。

 ただ、自由の身になれるのはもう少し先である。
 当事者は退所と同時にフォトン制御リングの装着を義務付けられる。寝る時も入浴時も外してはいけない。リングはフォトンパワーを抑える性能を有するが、その制御パワーは強くない為、本気で力を込められてしまえばただのリングと化してしまう。それよりも、監視装置としての役割が大きかった。装着者から過剰なフォトンが放出された場合、すぐに関係機関に通報され、特殊要員に強制保護されてしまうのだ。
 これを装着したまま三年間、過剰検出がないまま過ごせれば装着義務は免除されるが、もし過剰フォトンを検出をした場合は最低一ヶ月間、政府施設への入所、及びトレーニングが強制される。施設へ逆戻りである。制限解除の申請をした上でフォトンパワーを使用した場合のみ入所の必要はないが、事情を問わず三年間の観察期間はリセットされてしまう。残り一週間だったとしても容赦は無い。
 これについて、制限解除を申請して外した場合は観察期間リセットの必要はないだろうと、当事者会は長年、政府に対し法改正を要求している。

  ◆◇◆

 ――メイドロボがそう楽しげに言いながらにじり寄ってきた。
「うふふ……どこから壊してほしいですかあ?」
 ただ、エーテルは彼女のキャタクターに胡散臭さを感じ始めていた。
 こいつは自分を死なない程度にいたぶろうとしている。なんの為に? そして何故ここで私を待っていた? 全てが繋がりを持っていない。
 大きく見開かれた赤い瞳と不適な笑みも、ずっと形が変わらない。これも彼女の性格ではなく、ただの無機質なフェイスパーツだとしか思えなくなってきた。
 こいつに目的意識はない。しかし、目的を持った奴がこいつの背後にいる。そんな気がしてなからなかった。

 割れたガラスや食器を踏み潰しながら、一歩、また一歩と近づいてくる――その時だった。
 メイドロボの足元から突如、放電が発生したのだ!
「わあっ、なな、なんですかあ!?」
かかった!」
 いま、数百万ボルトの電流がメイドロボのボディを駆け巡っている。それはエーテルが蹴り上げを食らったと同時に床に仕掛けたトラップであった。
 その隙にエーテルは背後に回り込む――が、しかし! くるりと振り返ったメイドロボに首を掴まれてしまった!
「なあんちゃってえ。対電処理してないとでも思ったんですかあ?」
 それでもエーテルは、苦しそうな声をあげつつ、ニヤリと笑みを見せた。
「一瞬でよかったのよ……アイン、いまよ!」
 エーテルの片手に握られた携帯ビジフォン。そこから伸びたケーブルはメイドロボの後頭部にある入力端子に挿さっていた。 
『任せろ!』
 メイドロボはその直後にガクンと膝を崩した。
「ふぅ……終わったわね」
 エーテルは自分の首をわし掴みにしていた指を、強引にこじ開けて振り払った。

 アインがメイドロボに機能停止ウイルスを送信したのだ。セキュリティロボなどと戦闘する場合によくやる戦法だった。正当防衛だったとしても、ボディを破壊してしまえば後で修理費用を請求されることがある。
『こっちは冷や冷やしたぞ。もうちょっと安全な方法はとれないのか』
「仕方ないでしょ。いきなり襲われたんだから」
『まぁいいだろう、無事で良かった。こっちはこのアンドロイドのデーターを解析してみる』
「私はこの部屋を探索するわ」
 穴だらけになってしまった室内を見渡し、エーテルはため息をついた。
 とにかく、重要な証拠品が無事であることを願った。それも、ここにあるかどうかさえわからないのだが。
 メイドロボは倒れもせず膝をついた状態で停止していた。こいつもあとで回収し、然るべき所に届け出ることになるだろう。

  ◆◇◆

 エーテルはこれといった発見もないまま家具の引き出しを漁り続けていた。地味な作業に少しずつうんざりしてくる。
『そっちはどうだい?』
「なーんにも。これといったものは見つからないわね」
 事件の前から脅迫を受けていたかもしれないし、もしかしたら知人や友人に犯人の関係者がいるかもしれない。そんな可能性も想定しているが、ここに何不自由ない幸せな家庭があったことがわかるばかりであった。
 アルバムは最初の方のページを見ただけで閉じてしまった。エーテルは家族写真は苦手だ。向き合うには重たい過去が多すぎると、そう思う。でもこれが仕事であることもわかっている。気持ちが落ち着いたら、もう一度開くことにした。
『こっちは彼女の正体が判明したよ。解析の結果、彼女はただのメイドロボではなく、リサというキャストで、登録アークスのレンジャーであることがわかった』
「メイドロボにしてはやけに強いと思ったわ……でもそれ、確かなの?」
『70%の適合率だ。残りのデーターは破損も大きいので解析に時間がかかるが、間違いな――(プツン』
 通信が急に途切れてしまった。
「アイン、どうしたの? ……あら?」
 先の戦闘でインカムが壊れたのかもしれない。
 インカムを外して状態を確認している時だった。

「ではデハでは……」

 機能停止したはずのリサが、がくがくと小刻みに震えながらゆっくりと立ち上がった。
 壊れたスピーカーから再生されたような汚い音声は、硬直した顔、その唇の奥から聞こえてきた。
 アインが失敗? 一瞬そう思ったが、なにか様子がおかしい。

「……では、でばでは、デハではではデハではDEWA…………」
「なによ……っまさか!」

 エーテルが〝理解〟した時には、もう遅かった。
 直後、アイモニターが急激な熱源を感知!
 リサのボディが、ベコベコと急激な圧壊を始めたのである!

  ◆◇◆

 その頃、エーテルのいた住居ビルから数百メートル程離れた地点に、二人のアークスがいた。
「――今の爆発かしら?」
「どうやらそうのようだな。あっちのほうですげー煙があがってる」
「まさか……まだダーカーが残っているのかも」
「とにかく、行ってみるか」

 

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小説情報 

 表紙と挿絵は絵師のnukaさんに描いていただきました!

絵師nukaさんの主な活動ページ

 

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