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人は、言葉からは逃げられない。

<10> 真相 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

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目次⇒LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

<10> 

 クルードの院長室までやってきたエーテルは、キャビネットの書類や引き出しの中をくまなく調査し、誘拐や襲撃事件に繋がる記録を探した。
 明かりもつけられないので、視界はアイモニター機能の簡易ライトだけが頼りだった。

 アインは携帯ビジフォン内から有線で、デスクビジフォンにアクセスしていた。黙々と探索するエーテルの様子が気になった。
『なぁエーテル、なにもみつからなかったら、どうするつもりだ』
「今度はクルードの家に行くわ。そこで尋問する。……もしかしたら拷問しちゃうかも」
 アインは呆れてしまった。尋問は自分も考えていた選択肢ではあったが、あくまでも最終手段だったし、いずれにせよ慎重に決めなければならないことだ。
 エーテルがそれらの判断の重さを理解できていないように思えた。
『……今更止めはしないが、一体なにがきみをそこまで駆り立てるんだ。今までも感情的になったことはあったが、今回のきみの暴走は理解できないな』
 エーテルは作業を止めた。そして静かに口を開いた。
「……私さ、自分の両親、殺しちゃってるのかもしれないの」
『あぁ。でも、事故だろ』
「うん、そうなんだけどね。なにも感じなかったんだ。それがすごく怖かった……」
エーテル……』
 アインは言葉に詰まってしまった。
「そしたら今度はなに? もしかしたらそれ自体、クルードが仕組んだ嘘の真実かもしれないって?」
『本当の目的はそれか』
 エーテルは事件のことなど、どうでもよかったのだ。本当は、自分の過去を明らかにしたかったのだ。
「こんな気持ち抱えたまま、一日だって過ごしたくないの」
 アインはエーテルが不自然なほど愉しげに振舞っていた事情を理解した。懸命に自分を抑えていたのだ。
『……すまなかった。私はパートナー失格だな』
「なにを言うのよ。アインは、何も悪くないわ」
 エーテルはそう言って、引き出しを閉じた。
「さて……ここにはなにもなさそうだし、クルードの家に行くとしますか」
『わかった、奴の家の場所を検索しよう』
 その時だった。
「……わたしなら、ここにいるよ」
 部屋のどこからか声がした。
「クルード!?」
『なに? どこにいる?』
 エーテルは部屋を見回すが、どこにもクルードの姿は見えない。そもそも今この部屋には自分たちしかいないはず。
 その時、キャビネットが静かにスライドし、扉のように開いたのだ。
 見えない死角ができたことで、エーテルは反射的に銃を構えた。
「そんな物騒な物はしまってくれないかな……アーテル君。いや、今はエーテル君だったかな? 待っていたよ」
 開いたキャビネットから白衣の男、クルードが姿を現した。
「クルード……」
 待っていた――その言葉から、やはりあの時の気絶は演技だったと確信した。こうして自分たちが再び戻ってくることも、計算の内だったのだろう。エーテルは改めて銃を構え直した。その銃口はクルードの顔面に向けられた。
エーテル、撃つなよ?』
 アインはそう念押ししてから、クルードに言った、
『クルード、貴様を光子多感症患者誘拐、及びアークス襲撃事件の重要参考人として強制連行する。調べはついてる。諦めろ』
 まだ物的な確証を得ていたわけではないが、クルードは首謀者ではなくとも、事件関係者である可能性は高いと踏んでいた。アーテルの正体に気づいているし、先の余裕のある口調がその立場を裏付けていた。
「ほぅ、彼は優秀だな……」
 証拠もなしに、臆せずに強制連行を宣言したアインの判断力をクルードは称えた。
 ただ、エーテルはその言葉をただの挑発として受け取った。
「うつぶせになって両手を頭の上に! 動いたら撃つわよ!」
「おいおい、あまり騒ぐと他の職員に気づかれるぞ?」
 わかっている。わかっているが、エーテルは冷静ではいられない。
エーテル、この状況を他の者に見られたら面倒だ』
「くっ……」
 アインはクルードと話をすることにした。そういうのは自分の役割だった。
『クルード、わざわざ姿を見せた理由はなんだ』
「きみたちを地下の研究室に招待しようと思ってね」
『なんだと?』
「……研究室ですって?」
 エーテルはゆっくりと銃口を下ろす。
「あぁ、そこで全てを話そうじゃないか」
 罠かもしれない。アインは真っ先にそう考えた。ただ、このまま連行しても取調べをやり過ごされる可能性はゼロではない。それならいっそ言う通りにし、確実な証拠をつかんだ方が良いとも思える。
エーテル、取引だ』
「……わかったわ。案内してもらおうじゃない。そのかわり、少しでも変な動きを見せたらどんな手を使ってでも拘束するわよ」
「あぁ、わかったよ」
 クルードは丁寧な動作でエーテルに手の平を差し出した。
エスコートはいらないわ。触らないで」
 エーテルは通路の入り口まで進むとそこで壁に背を向けた。そしてクルードを睨みながら、お前が先に進めと銃口で指示した。
 クルードは彼女のその態度が気に入ったのか、薄気味悪い笑みを浮かべた。

  ◆◇◆

 石材でできた螺旋階段をぐるぐると下りる。所々に見える欠けやヒビなどから、相当前に作られた印象を受けた。
 ここは電気が通っていないのか、蝋燭が灯されていた。明かりはそれだけだった。
『どれくらい降りるんだ』
 アインがそう聞くと、クルードは「地下四階だ」と言った。アインは不審に思った。この施設は地下三階までしかないはずだし、そもそもこんな空間だってマップ上にはなかったはずだ。
「マップには載せていない閉鎖されたエリアを使っている」
 それならわかりようもなかった。いや、院長であるクルードは、この研究所と関わりある全ての情報を好き勝手に改編できるのだろう。その前提で考えるべきだった。
 エーテルはクルードから注意が逸らせないが、今のところ襲ってくる気配は無いようだった。どうやら本当に、今は研究室へ案内したいだけらしい。そこで、なにを見せられるのか――

 アインは最悪の事態として、やはりこれが罠で自分たちが捕縛される可能性を考えていたが、エーテルは自分の身を案じるよりも、言い知れぬ不安が少しずつ膨らみ始めているのを感じていた。

 下まで行くと、頑丈そうな鉄の扉があった。その脇に取り付けられたカードキーをクルードが操作すると、扉がゆっくりと開かれていった。
 そして、エーテルは扉の先に広がる光景を見た。
「これは……っ!?」
 その部屋には、無数のコンピューターや計器、大きな筒状の水槽が並んでいた。

 水槽を見上げながらエーテルは駆け寄った。薄い緑色の液体の中には、チューブに繋がれた子供や大人たちが浮かんでいる。
 その内の一人のネームプレートに、ミライ・レオナードの名を見つけた。
「ミライちゃん!」
 水槽を叩いてみるが、反応はない。やはり意識はないようだった。死んでいるのか、生きているのかさえわからない。

「うぅ……うあぁぁああああっ!!!」
 エーテルは怒りで気が狂いそうになり、拳を強く握り締めた。荒れる感情と、体の震えを必死で押し殺しながら振り返り、叫ぶように言った。
「なぜこんなことを! 貴方の狙いはなんなの!? 答えなさい!」
 クルードは銃口を向けられたが、全く動じる様子はなかった。
 彼女の反応になにかを期待してるような、意味深な笑みを浮かべている。
「……まだ、思い出さないのかい?」
「……なに?」
「おかえり、エーテルくん」

 その言葉を聞いた途端、エーテルの頭は真っ白になった。 
 アインもその言葉の意味を理解した。
『まさか……エーテルもここにいたのか?』
「そうだよ、彼女も過去に一度ここへ来ている」
 その二人の会話はもう、エーテルの耳には入っていなかった。

 

 ――おかえり? なんで…………あぁっ!!!

 自分はクルードのことをずっと前から知っていた――
 この場所も知っている――
 あの水槽の中からクルードをみていた――
 自分はクルードのことを、パパだと思っていた――

 放心したエーテルはその場にへたりこんでしまった。
 もうなにが真実なのか、わからなくなってしまった。
エーテル、ダメだ。立つんだ!』
「……まぁ、ずっと忘れていたのも無理はない。ここを出る時に、記憶はいじらせてもらったからね」
 二人の動揺には構わず、クルードは歩きながら話を始めた。
「今のフォトンテクノロジー技術は、光子多感症患者のお陰といっても過言ではない……彼らの存在、すばらしいと思わないかい? ……きみは、風邪をひいたことがないだろう。大怪我だって治ってしまう……その反応は他の光子多感症患者よりも顕著に出ていた。私がそれまでに求めていた〝素材〟だった。でもきみは幼すぎて、負担の大きい実験には耐えられなかったから、外の世界で成長してもらうことにしたんだ」
 足を止めたクルードはエーテルの顔を見ながら言った。
「つまり……きみをここへ案内したのは、〝回収〟の為だったんだよ。成長したきみをどうやってここに誘うか、ずっと考えていたんだがね、その手間が省けたよ。くっくっく……」
『……貴様の目的はなんだ?』
 クルードは何か言いたそうだった。
「はぁ……全く、いいかい? 不老不死だよ!!! 彼らのDNAを調べればそれが叶うかもしれないんだよ!!!」
『そんな、馬鹿な話を!』
「……なに言ってんのあんた……それで、神にでもなる気?」
 放心状態のエーテルは、目の前の男の話についていけなくなりそうだった。
「神だって? くっくっく……いや、失礼。数年前にも、ある男に同じような台詞を言われたものでね」

 それは三年前に、この場所で起きたことだった。


 ――それで神にでもなったつもりか!?
 テンガロンハットをかぶった大きなキャストがクルードに銃を向けていた。彼もまた、この事件の真相に気づき、クルードに辿り着いた一人だった。
「〝なる〟んじゃない……私が神なんだよ!」
 その言葉の直後、まるでそれが合図だったかのようにして、周囲の物陰から何体ものキャストが現れた。
「離れろ! 俺に触るな!」
 量産型と思しき黒いボディのキャストたちが、ちぎってもちぎっても、次から次へとしがみついてきた。
 奮闘する彼に、クルードは言葉をかけた。
「……きみは、友人の首を斬り落としたそうじゃないか」
 彼は返事しなかったが、あの時の話であることは理解できた。足を吹き飛ばしても、胴体に大穴を空けても彼は動き続け、襲い掛かってきた。そうするしか術がなかったのだ。
「選択は正しい。そいつらも、頭部を斬り落とすまで動き続けるぞ?」
「なにぃ? 面倒なものをっ……!」
 多勢に無勢だった。そのうちに、押さえ込まれてしまった。
 圧し掛かるキャストたちの塊から、彼の顔だけが出ていた。
「……俺を、どうするつもりだ」
 クルードはその白い手に注射器のような器具を握っていた。指に加えられたわずかな力でピストンが押し込まれると、針の先端から紫色の液体が飛び出した。
「きみは色々と知りすぎたよ」
「くそっ! やめろぉぉぉおおおおぉ!」
 その処置は数秒で終わった。彼は少し苦しんだあとに静かになった。
 クルードは近くのキャストに命令した。
「ファンジを起動しろ。転移先はナベリウスの森でいい。勝手にどこかで戦って、のたれ死ぬだろう。あと念の為、メモリーは消去しておけ。調べられたら面倒だからな」
 クルードが注入した液体はダーカー細胞などを調合した特殊な精神破壊薬だった。打たれた者は精神を蝕まれ、意識もないまま辺りを徘徊し、人や物を攻撃するようになる。

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「――彼の名はなんと言ったかな? すまない、名前を覚えるのが苦手でね。しかし、なかなか鋭い男だったよ。最後はあっけなかったがね」
 クルードが昔話を楽しんている間に、エーテルはまた立ち上がっていた。
「その男に、一人娘がいたことは知ってるかしら……?」
 この時、すでに周囲のフォトンが異常活性していたのをアインだけが感知していた。

『まずいな……いや、今はこれしか……』

「うん? さぁ……そこまでの身辺事情は調べてなかった。それより、きみのフォトンパワーがあれからどれだけ成長したのかとても興味深い。是非見せてくれないか?」
「ふふ……そんなにみたいの? 私の本気が……」
 ゾンデ系テクニックが得意なせいだろうか。エーテルの周囲に、バチバチとした電流が滞留し始めた。

「ほぅ……これはこれは……」
 クルードは彼女の周囲に起き始めた影響より、特にエーテルの身体的特徴の変化に注目した。やや逆立った髪は静電気などの影響だとしても、瞳の色に生じた変化は詳しく調べてみなければ説明がつきそうになかった。
『……エーテル、私の分も暴れてくれ』

「あんたは絶対……許さない!!!」
 エーテルは初めて自分の意思で力を解放した。
 それは暴走ではなく、〝覚醒〟であった――!

 

 一方、無事に研究所の地下エリアに辿り着いたゼノとエコーは静まり返った通路を進んでいた。
「油断するなよ、なにが飛び出してくるかわからないぜ」
 武器を構えたまま慎重に通路を歩き進む二人。電気はついているので、どこかの部屋は使われていると考えられる。
「しっ……いまなにか物音が」
 通路の奥から金属音が聞こえた。鎖がこすれたような音だった。二人は奥にあった鉄扉の室内を格子からそっと覗き込んだ。その暗い部屋の奥には、二つの赤い光がぼんやりと浮かんでいた。

 

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次話


作品PV



小説情報 

 表紙と挿絵は絵師のnukaさんに描いていただきました!

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