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人は、言葉からは逃げられない。

<11> 決着 / LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

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目次⇒LOST MEMORY -PHANTASY STAR ONLINE 2- 二次創作小説

<11>

 生身の人間と覚醒したエーテル――勝負にもならないはずだった。
 しかし、クルードはまるでゴムボールでもキャッチするかのような軽いタッチで、エーテルが渾身の力と怒りを込めて打ち放った拳を易々と受け止めていた。突進の力も加えられた、重いパンチのはずだった。
 それだけではない、今のエーテルの拳は電流を帯びているが、感電しているような様子もまるでなかった。クルードは布手袋をしているがそれが特殊なものであるとも思えない。手袋は焼け焦げて灰になっているのだから。
「なっ……!?」
 握られた拳を振りほどいて、すぐに距離をあけた。なにかおかしい。ただの人間のはず!
「くっくっく……ありがとう。これがきみの〝力〟か……ではお返しに、私の研究成果も見せてあげよう」
 クルードがそっとメガネを外した。瞳が赤く染まっていたようにみえたのは気のせいだろうか。
 その時、アインが叫んだ。
『ダーカー反応!』
「な、なんですって!?」
 クルードの体が人間にはできないはずの動きを見せ始めた。あちこちの筋肉が増強され、膨らんだかと思えば凝縮し、皮膚の色も硬質的なグレー色に変化していった。あくまでも人型を維持したまま、全身の形状は昆虫のように鋭くなっていった。
 そして、変形を終えたクルードの姿から、エーテルは容易にダーカーを連想することができた。
「これが私の〝力〟だよ!」
『まさか、ダーカーと融合したというのか!?』
「人であることを捨ててまで……あんた狂ってるわ!」
 脚力の高さが窺える動物的なフォルムの脚と、ブレードのような形状の片腕から、接近戦を主体とした戦闘スタイルだと判断できた。
 エーテルはすぐに戦闘態勢をとった。右手には銃を、左手にはナイフを重ねるようにして構える。
 しかし、クルードはエーテルを警戒する様子もなく、水槽の方に向かった。
「……まず、エネルギーを補給させてもらおう」
『補給?』
「食事だよ」
 水槽の制御装置から一本の管を引き出すと、クルードはそれを口に当てた。そしてゼリーでも飲むかのようにしてズチュズチュと、なにかを吸い込み始めた。
 すると、水槽の中の人間がどんどんとやつれていった。
「やめろ!」
 目の前の光景を理解したエーテルは引き金を引いた。
 しかし、撃った弾は全て弾かれてしまった。クルードも蚊に刺された程度にしか感じていないようだった。
 今度はナイフで突撃した。フォトンパワーの電流も加えたが、突き刺した瞬間、刃が割れるように砕けてしまった。
 その一瞬、エーテルはなにが起きたのか理解できなかったのだが、
『ただのナイフではきみのパワーに耐えられない。銃かフォトンテクで応戦するんだ』
 気を切り替えてまた距離を開ける。そして両手に電流を溜め込んでからクルードに打ち放った。しかし、特にこれといった避ける動作もしなければ、防御姿勢すらとっていない。
 口から管をとったクルードがこちらを向いた。食事を終えたようだが、腕を組んだだけで何もしない。エーテルの攻撃を待っているようだった。
「……なめられてるわね」
 エーテルは渾身の力をこめてグランツを放った。得意ではないが、属性から考えてこれが弱点のはず。
「む……」
 流石に警戒する素振りを見せたが、これも、片腕を使って防御しただけだった。
「……もう終わりかね?」
 舌打ちしたエーテルはもう一度銃を撃った。が、銃声が空しく響いただけだった。 
「終りのようだな。ならばこちらから行くぞ……っ!」
 その言葉の直後、クルードは自分に向かって真っ直ぐに突進してきた。
 エーテルの予想通り、至近距離におけるブレードの斬撃が繰り出された。とっさに防御系のテクをかけ自分をフォトンコーティングしたはいいが、クルードの型のない乱れた剣さばきは流れが全く詠めず、確実にダメージが蓄積されていった。それもわざと急所を外してるように感じられるのが腹立たしかった。
 そして、最後は腹部へ蹴りが放たれた。五メートルほど吹き飛ばされたエーテルはなんとか姿勢を保つが、
「ごほっごほっ……アイン、どうしよう。こいつ強いよ……」
『ここは引くんだ! かなう相手じゃない!』
「逃げてどうする。このことを公表するか? 社会の秩序が狂うだけだぞ。光子多感症の暴走事件が表沙汰にならなくなったのは、誰のお陰だと思っている?」
 クルードは続けて言った。
「……選びたまえ。研究に協力するか、ここで私に殺されるか。きみは貴重なサンプルだ。悪いようにはしないぞ」
 その言葉の途中、なにかの駆動音につられて振り返ると、出入り口が閉じられていった。
「あんたに体をいじくりまわされるくらいなら、死んだ方がマシよ!」
 そう虚勢を張るエーテルだったが、先の攻防で深刻なダメージを受けたことが顔と声にでていた。回復が追いついていない。
「ならば、仕方あるまい……ただ、これは戦闘データーの収集もかねた〝実験〟だ。簡単に死んでくれるなよ?」
 クルードの2ターン目が始まった。
 エーテルは懸命に応戦するものの、クルードの重たい斬撃はエーテルの防御を易々と貫いた。盾代わりに使っていたハンドガンは弾き飛ばされ、防御テクの維持が辛くなってきた頃からは、クルードの一方的な戦いになっていった。
「ふははははっ! さっきまでの強がりはどうした!」
 慣れない多量の出血のせいか、その内に意識が朦朧としてきたエーテルは、地べたに膝をついてしまった。

 クルードはエーテルの銃を拾い上げた。
「ヤスミノコフ2000H……いい銃を使っているな」
「それに、さわるな! はぁ……はぁ……」
 エーテルがずっと愛用してきたハンドガン――それはスノゥの形見の銃であった。
 クルードは三年前にもここで見ているが、気づかなかった。
「弾はまだ残っているようだな」
 おもむろに銃口エーテルに向けた。そして引き金を引いた。
「――っつぁああぁぁああ!」
 激痛に絶叫するエーテル。弾は右肩に命中した。
「ふむ」
 クルードはエーテルの傷の具合を観察しながら、今度は足にもう一発撃った。
 斬撃で受けた傷は塞がり始めているようだが、撃たれてできた傷は回復に時間がかかるようだった。回復の速さはやはり傷の深さによるのだろうか。ただ、他の修復箇所が多い為、何かのエネルギーが不足しているとも考えられた。
「……今度は額を撃つとしよう。常識的に考えても絶命は免れないだろうが、キミの場合のどうだろうか。興味がある」
 いくらなんでも、頭や脳を吹き飛ばされれば死んでしまう。エーテルは敗北と死を予感した。
「くそぅっ……こんなとこで…………」
『立てエーテル! 逃げてくれ!』
「……期待を裏切らないでくれよ」
 クルードは静かに引き金を引いた。

 その直後だった! 閃光と爆音が響いたのだ!

「なにが……起きたの……?」
 爆煙が晴れ、クルードの姿が見えた。
「……な……なんだとぉぉおお!?」
 クルードは驚きを隠せなかった。銃が、グリップやトリガー部分などを残して激しく弾け飛んでいた。そして、その暴発の衝撃により、自分の顔面に銃の破片が深々と突き刺さっていたのだ。
「こんな、馬鹿な!」
 ただの暴発にはみえなかった。アインはとっさに状況の解析を試みたが、原因はわかりそうもなかった。
 エーテルは一目でチャンスだと思った。クルードの体は硬質的な体皮に守られていたが、破片が突き刺さった箇所はもろく砕けていたのだ。
 激痛に耐えながら立ち上がり、右腕の拳に全ての力を込めた。
「これをあの傷口にぶち込めば……!」
『やれ! 今ならきっと致命的ダメージになる!』 
 エーテルの拳に集約されるフォトンエネルギー。その爆発力を考えると、今のもろくなった顔面を貫くことが予測できた。恐らくひとたまりも無いだろう。
 しかし、うろたえていたクルードは冷静な様子に戻っていた。
「ふぅ……切り札はとっておくものだよ、エーテル君」
 クルードはエーテルから距離を開けると、指をパチンと鳴らした。すると、周囲から何体もの人影が現れた。
「……こいつら……リサ!?」
 気が付けば五体のリサに囲まれていた。
「うふふふっ……」
「彼女は私のお気に入りでね。つい何体も〝模倣体〟を作ってしまったよ」
『模倣体?』
「そう、オリジナルのコピーさ。以前まではオリジナルそのものを素材にしていたがね。精神に残る〝オリジナルの意思〟の影響で言うことをきいてくれないことがあった。だから意思を持たないコピーにしたのさ」
 クルードはエーテルを指差した。
「ターゲットはあの女だ。殺さない程度に痛めつけろ」
「わかりましたあ。マスター……うふふっ」
 ゆっくりと歩き出した五体のリサは、瞬間的にその足を速めた。そして格闘戦を挑んできたのだ。
 クルードほどの俊敏な動きではなかったが、その猛攻たるや、回避と防御だけで精一杯であった。
 そして、クルードはまた水槽の前に立っていた。食事をして回復するようだ。
エーテル、クルードを回復させるな!』 
「ちくしょう! このままじゃ……」
 なんとか一体のリサの頭部を拳で打ち砕いた。ただ、その動作の分だけ、他のリサからの攻撃には無防備となる。
 打撃を受けながらも回避行動をとるが、ついには壁を背に追い詰められてしまった。
「うふふっ、じっとしててくださいねえ~」
「すぐに壊してあげますからあ……」
 今度こそ本当に駄目だと思った、その直後、一発の銃声が響いたのだ。
「なにっ!?」
 クルードが掴んでいたチューブが千切れて吹き飛んだ。
 さらに、エーテルを囲んでいたリサの頭部が次々と銃弾に撃たれ、破壊されていったのだ!
『どうした、なにが起きた!?』
 エーテルにもなにが起きたのかわからなかったが、まだリサが一体残っていたので戦闘態勢をとった。
 ただ、よくみるとこのリサはなにかが違った。ライフルを持っているし、自分の返り血も飛んでいない。その上、あちこち痛めつけられていた。そんなダメージを負わせるほどの攻撃をした覚えはなかった。
「うふふふっ……〝自分〟を撃つってなかなかいいもんですねえ」
「……なにを言って……まさか!」
『オリジナルか?』
 電撃を加える為に込めていた力を解いた。すると、リサの後ろから駆け寄る足音が聞こえた。ゼノとエコーだった。
「リサ待って! 先に進まないで!」
「うわっ、なんだあいつ! またダーカーか!?」
 到着したゼノは武器を構えた。
『どうやら、援軍が来たようだな』
 エコーはエーテルを見て言った。
エーテルさん? どうして貴方がここに?」
「えっと、それは……」
 どこから説明すればいいのか、エーテルが迷っていると、
「おいリサ! やめろ!」
 ゼノの声に振り返ると、片腕でクルードの首を鷲づかみにし、豪快に持ち上げているリサがいた。
「……覚悟はできていますかあ? よくも私をこんな目に……」
「ぐはっ……がはっ…………」
 苦しそうなクルードの口から紫色の体液が泡を吹いて噴出していた。
 自分の顔にまで垂れてきたその〝返り血〟をぺろりと舐めたリサは、クルードの顔面にライフルの銃口を押し付けたまま引き金を引いた。顔面の体皮が破片となって飛び散り、その奥に人間のものと思しき脈打つ皮膚が見えた。
「まさかあれがクルード? ……ゼノ! リサを止めて!」
「えぇ俺が? 無理無理!」
「でも、このままじゃきっと殺しちゃうわ!」
 その二人のやりとりに気づいたリサが言った。
「大丈夫ですよお……殺したりはしませんから……わたし人は撃ったことないでんす……ああ、さっきのはノーカウントですよお……こいつはいまダーカーみたいなものですからねえ……うふふっふふっ」
 リサはそう言いながら、クルードの顔を足のかかとで踏みつけ、その傷口にライフルの銃口をグリグリと押し当てていた。クルードは苦しそうな悲鳴を上げている。
『……どうやら彼女のオリジナルも、模倣体と大してかわらない性格のようだな……恐ろしい』
 エーテルはドタバタとした彼らのやり取りをみて、なんだか気が抜けてしまい、仰向けに倒れてしまった。
「ちょっと、エーテルさん大丈夫!?」
「はぁ……お腹空いたし、もう、眠い…………」
 直後、意識が朦朧としたエーテルは気絶するように眠ってしまったのだった――

 

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次話

 後日掲載

 


作品PV



小説情報 

 表紙と挿絵は絵師のnukaさんに描いていただきました!

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