HyogoKurumi.Scribble

言葉は嘘をつきません

自伝:タイトル未定 その4『廃人』

 こつこつと書く。

 

前回:自伝:タイトル未定 その3『俺の人生は終わった』

 

 精神病院へ連れてってくれと、辛そうな顔をして言ったはずなのに、母はプイと調理場の方を向いて仕事に戻って行った。その背をみながら私は絶望した。 

 

 そして何かが切れて弾けた。それまで意識しないようにしていた感情がオンになった。

 

 ―― 一階の調理場がいつも喧しい!

 急に仕事を手伝ってくれと呼ばれるのが本当に嫌だ!

 人雇えないなら店をするな!

 なんで俺には自分の部屋がない!

 子供用の部屋も用意できないなら家をつくるなよ!

 

 頭の中にイライラする感情が次から次へと湧いてきた。それらは「不満」という性質の意識だったわけだが、当時の私は不満というカテゴライズができず、自分の意志とは無関係に浮かぶその意識を隠すことができなかった。


 二階へ上がった私はいつものようにかばんを置いて、テレビの前に胡坐をかいて座った。でもテレビはつけなかった。それどころではなかったのだ。

 頭の中では、これから先の人生への絶望感とイライラがハリケーンとなって暴れていた。

 

 学校での自分はもうどうにもならない。勉強もできない、人間関係もぐちゃぐちゃ、運動もできない。なにもできない。家に帰っても、自分の部屋もない変な間取りの空間でゲームするだけ、親はしょっちゅう夫婦喧嘩。しかも宗教……。

 

 私は頭に浮かぶ意識を一つ一つ確認した。それまでの記憶の断片だった。その一つ一つが私の人生の価値を決定づけた。

 

 十数分くらい、胡坐をかいたままじっとして自分の意識と向き合った。

 自分の意識は、とても苦しいものだった。そして、その苦しい意識がこれからも生きている限り、ずっと増え続けることを悟った。

 

 私は「疲れた」と思った。

 考えても余計に苦しいだけ。

 ならもう考えないほうがいい。

 

 私はテレビの下からスーパーファミコンを引っ張り出してパチンとスイッチを入れた。

 そしてコントローラーを握って、なにも考えずただ作業的にプレイした。黙々と、まるでそういう仕事をしているかのように。

 

 その日からの生活もそんな感じだった。

 朝起きて、何も考えずに学校へ行って、何も意識せず放課後になるまで過ごして、家に帰った後は、何も考えずにゲームして晩御飯食べて寝るだけの日々。そういう生き物になった。

 

 一週間くらいしてから、母が「どうしたん? なんかあったんやろ」と聞いてきたことがあった。私は「あ、わからないんだ」と心の中で思った。返事はしなかったと思う。

 

 たまに心に思うことといえば、自分は廃人になったという現実だった。

 

(俺は廃人だ、廃人。もうどうでもいいんだ……)

 

次回に続く

 

エピソード

  • 中2の時に考えるができるようになった
  • 嫌われていたことを自覚する
  • 母が精神科に連れてってくれなかった
  • 全てに絶望して廃人になる