発達障害考察ブログ HyogoKurumi.Scribble

言葉は嘘をつきません

「オフィス業務=普通の人でもできる仕事」という思い込みが日本を自殺者大国にしているのでは

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 発達障害の症状を改善できた私はいま、とても平穏に暮らしている。20代の頃は考えられなかった生活だ。

 この日常の中で、ふと思った疑問がある。

 

 私はなぜ、「オフィス業務のことを、誰でもできる普通の仕事だと思い込んでいたのだろうか?」という疑問だ。

 

 どれだけ記憶を掘り起こしても、そのきっかけとなるエピソードがないのである。

 

 前置きから話す。

 私は中学生の頃のいじめ体験を通して自分の非定型特徴を自覚し、挫折を精神的に乗り越えた後は人生の進路のとして、普通の人になることを目指して生きることにした。生き伸びる為にそう成る必要があると判断した。

 同時に、将来の仕事も決まっていた。それが、オフィス業務の会社員だった。普通の人ならできる仕事だから、その仕事に就ければ普通の人になれた証になると思ったのだ。

 当時の私が考える「普通の人のイメージ」は、そんな漠然とした進路を思い描かせた。いま思えば偏見もいいところだが、私は疑いもせずその道を手探りで歩み続けた。

 そして私は社会に出てから、オフィス業務の仕事が普通ではないことを知った。あれは誰にでもできる仕事ではないし、あの世界は実家の狂った日常と同じだったのだ。

 

 私がオフィス業務の世界で会った相手の多くは、自己愛性パーソナリティ障害の話に挙がる症状を抱えている異常者たちだった。勿論、"全員が"とは言わないが、恐らく私は生きている限りこう言い続けるだろう。『オフィス業務は普通の環境ではなく、躁状態を維持できないと適応できないこの世の地獄である』と。

 半生をかけて普通を目指してきた私には、そんな風に心境を整理する時期が必要だった。全ては自分の思い込みだったと、その事実を受け入れる為だと思う。 

 疑問はその言語化の過程でふと沸き上がってきたものだ。

 私は誰からも、オフィス業務の会社員になれと強要されていないし、オフィス業務について特別なエピソードを抱えていたわけでもなかったのである。

 

 きっかけとなるエピソードがないということは、日常の中で刷り込まれた偏見だと考える。

 今の時代がどうなっているかは知らないが、私が中~高校生の頃は「大きな会社に就職すること」が模範的な人生観とされていた。屋外で働く肉体労働は勉学に力を入れなかった不真面目な人が就く仕事、というイメージだ。そのどちらでもないアーティスト的な将来像は、現実逃避的な思想とされた。

 これはこれで、普通の生き方とオフィス業務を紐づけしているが、私に思い込ませたのはこれじゃないことはわかる。私はその常識的発想を疑っていた方だし、親からも先生からもそういう生き方を強要されたことはなかったからだ。

 

 この次に思いついたのはアニメや漫画の影響だった。

 主人公の父親はだいたい会社員だったと思う。のび太のパパ、しんのすけの父ちゃん、マスオと波平、みんなオフィスで働く会社員であり、特別な能力を持つ人間ではないとされている人たちだ。

 親が共働きで、非定型環境で、半ば放任されて育った私はテレビっ子だった。その私がアニメなどを通じて会社員=普通の人、普通の人ならできる仕事だと思い込むことは、仕方のないことだろう。

 

 どちらが思い込みの要因か?と考えると、やはりアニメの影響だと思う。

 

 この本来なんでもないような思い込みが、私の人生に大きな影響を及ぼした。「オフィス業務=普通の人ならできる仕事」だと思っていたせいで、私は大人の発達障害者が抱える症状的に、最も相性の悪い仕事に就くことを目標にしてしまったのである。

 

 不運が重なれば、どこかで自殺していたり、誰かを殺していたかもしれない。本当に、苦しかった。

 

 この「オフィス業務の会社員=普通の人でもできる仕事」という思い込み、私だけではなくて、発達界隈全体で起きてないだろうか。

 当事者会で会った他の当事者たちもそうだった。皆各々生き辛さや苦労を語るが、事務やデスク周りの仕事をする人ばかり。肉体労働者はいない。

 

 なぜ苦手な会話を駆使しなければ遂行できない業務に就く?

 なぜ物理的な結果を基準に動作するだけで遂行できる業務に就かない?

 障害だからできませんではなく、自分にできない業務をやっているだけなのでは?

 もし「オフィス業務は誰でもできる仕事だからできないなら障害」という発想が、おかしな考え方だとしたら?

 

 誰にでもできるわけではない業務を、「誰でも出来ることだ」と思い込んで、できない人を「発達障害者」ということにして、本来しなくてもいい配慮やサポートをしてい……ないと、言えますか。

 

 私は本記事を書くにあたって、厚生労働省の自殺者統計の資料を開いてみた。

 

自殺の統計:各年の状況 |厚生労働省

  • 平成30年中における自殺の状況
  • 第1章 平成30年中における自殺の概況【PDF形式:681KB】
  • 図表の元データ【PDF形式:69KB】
  • 第2章 平成30年中における自殺の概要【PDF形式:33KB】
  • 第3章 平成30年中における自殺の内訳【PDF形式:195KB】
  • 付録1 年齢別、原因・動機別自殺者数【PDF形式:102KB】
  • 付録2 職業別、原因・動機別自殺者数【PDF形式:201KB】

 

 ずっと追いかけてきた情報というわけではないので、表を一見した印象でしか言えないが、デスクワーク系職業の自殺者数が他の職種に比べて多いように思えた。データの信憑性に疑問はあるが、偏っているのはわかる。

 

 この中のどれくらいの人が、発達障害の症状に悩んでいたのだろうか。顕在化させる必要があると私は思う。

 

 コンビニやファーストフードのアルバイトも、一昔は誰でもできる作業労働とされていたが、今の自体は違う。オフィス業務にも同じ観点が必要だ。自殺者数の多さから見て、資格者制にして就労できる人を選別するなど、なんらかの対策が求められるだろう。