発達障害考察ブログ HyogoKurumi.Scribble

言葉は嘘をつきません

私がオフィスのデスクワークでわかっていなかったこと

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 今の私は警備士だが、この職に就くまではオフィスで働く会社員だった時期もある。

 

 中学生の頃から自身の障害特徴に自覚があり、私はずっと「普通の人」になることを目標に生きてきた。

 今思えばすごい偏見なのだが、学生の頃の私にとって普通の人とは、サザエさんのマスオさんや、クレしんの野原ひろしのようなオフィスで働く会社員のことであり、オフィスのデスクワークは「普通の人なら誰でもできる仕事」だと思い込んでいた。

 だから、普通の人を目指して生きていた私にとって、「オフィスで働く会社員になること、加えてそこで仕事がそつなくこなせること」は、中学生の私が決めた人生のゴールでありスタート地点だった。

 当時は発達障害のグレーゾーンで、診察を受けないまま生きる覚悟はできていた。その代わりに「普通の人になれた」という証明をどこかで抑える必要があると考えていた。

 

 その夢は25歳の頃に叶った。私は当時勤めていたデバッグ会社で、契約社員としてオフィスで働き、上司や他の社員と仕事をしながら、アルバイト達に指示を出す立場になれたのだ。「契約社員は社員とは呼ばない」という考え方もあるようだが、私には関係ないことだった。スーツを着てオフィスのデスクに座って、電話応対をしたり上司の指示を受けたりして仕事をする。求めていたものが全て揃っていた。

 

 しかしその後、ストーリーは続かなかった。私はその契約社員の立場に関わるほとんどの業務がまともにできなかったからだ。

 

 細かいことを言えば、その業務に詳しくなかったとか、人間関係がうまく築けなかったなど、いろいろな要因を挙げることができる。でもそのほとんどは「仕事ができない人の特徴」とか「大人の発達障害」の話題の中で語りつくされていることだから、ここでは省略としよう。

 

 わざわざこのエピソードを記事にしようと思ったのは、他の媒体で自分と同じ理由を見たことがなかったからだ。 

 

 私はほとんどの業務指示において、「わからない・知らない・聞いていない」という状況に陥った。そういう時、普通は「周囲に教えてもらう」という方法で解決するらしい。

 でも私は「周りに聞く」という行動がとれなかった。そういう場合の理由として他の人が考えそうなことを下記に挙げてみる。

 

  • わかりませんと聞いて怒られるのが嫌だったから
  • 周囲を頼るという発想がなかったから
  • 周りが忙しそうでいつも聞く機会を逃してしまうから
  • なんて聞けばいいのかわからなかったから
  • 負けず嫌いでその選択肢が選べなかったから
  • 人に聞かなくても自分ならできると思ったから

 少なくともこの中に私が陥っていた要因は、ない。かすりもしない。いや、上記の理由で聞けなかったこともあるにはあるのだが、それ以前に、私はある状況に陥っていたのだ。

 

 私はとって業務とは、まず一番最初に「やり方の説明」があるもの。それが普通だという固定観念があったのだ。もう少し詳しく言うが、この私の思い込みは「説明があるべきだ」というニュアンスで言ったのではない。業務に取り掛かっている時点で「自分はもう説明を聞いたはず」というレベルでの思い込みなのだ。

 例えば上司から「仕事の資料を作成してくれ」等と頼まれるとする。その時点で私の頭はパニックに陥った。何故ならその資料の作り方を私は知らない、いや、覚えていない、からだ。だから「どこかで説明を受けたはずなのに忘れてしまったのか? 聞き漏らしたのか? 意識が飛んでいたのか?」という混乱に陥ってしまっていたのだ。

 

 その思い込みのせいで、実は説明なんてなくて、「初業務でも自分で考えて対応することが求められている」ということを理解するのに数年を要してしまった。

 このような極端な固定観念にとらわれてしまった理由には、複数の要因があると私は考えている。

 

  • アルバイト時代の勤め先の仕事の教え方がかなり適当で覚えるまでに苦労した。オフィスのデスクワークなら普通の仕事なので人材教育はしっかりしていると思っていた。
  • アルバイト時代、相手が十数秒前に目の前で説明したらしいことを自分が聞いていなかったということが実際にあり、自分は説明を聞き漏らす癖があると思っていた。
  • 当時は発達障害のグレーゾーン時代だったこともあり、自分の障害特徴の範囲をまだ見抜けていなかった。
  • アルバイトの転職回数が多く、どこにでもある業務でも職場によってやり方が違うことを知っていたので、どんな業務も初めて対応する際は必ず説明が必要であり、オフィス業務の人たちならそれくら常識的に理解していると思い込んでいた。
  • デバッグの会社ではデジタル製品の不具合を検出する業務なのだから、対人における意思疎通についても普通と異常の区別がついていると思っていた。
  • デバッグ業務のチェックはチェック方法が明確になっていることが普通であり、その会社の社員なのだから仕事の流れも明確に言語化されているものだと思い込んでいた。
  • 人材派遣会社では色んなスタッフに仕事を提案する職種なのだから発達障害や精神障害など人の意識の限界についても理解があると思っていた。
  • ちゃんと説明がある時もあった。ほんとに自分が忘れていただけの時もあった。

 

 時間をかければもっと挙げられると思う。

 ともかくこのような背景があり、「オフィス業務なら説明があるのが普通で、説明を受けていないまま処理の仕方を知らない業務に対応している」という自分の境遇が想像ができなかったのだ。

 

 業務が上手く進められない時や指示の内容が一度で理解できない時など、とにかく仕事でつまづいた時は、なんでもかんでも「仕事の説明を自分が覚えていない」という結論に至ったので、私から出る言葉は「すみません」ばかりだった。仕事を覚えていないということは自分の怠慢なのだから、謝る以外に言葉はない。

 

 あの頃、もし「仕事の説明を受けていないまま対応することが普通」ということを理解させてくれる言葉を誰かが言ってくれていれば、未来は変わっていたと思う。

 

 私は「理解できないままのルート」で生きた。そのことに後悔はないけど、その教えを必要としている人はいると思う。本記事を読んでくださった方、もし思い当たる社員がいたら、さりげなく気づかせてやってほしい。

 

 「業務はふるけどやり方の説明はないよ」ということを。