私はいつもGoogleドキュメント(.docx)からKindle本を制作していたのですが、KDPの管理画面を開いたら見慣れないメッセージが表示されていました。それは4月1日発売予定の「発達障害考察本1.5」の品質に関するお知らせでした。お知らせレポートを要約すると、「この本、論理目次がないよ。行間隔も固定されちゃってる。販売はできるけど、できれば解決してね」という内容でした。
論理目次とはページ内目次のことではなくKindle機能側の目次です。見出し設定をしていれば自動でつくと思っていたんですが、どうやらそうではないようで。行間隔の固定もした覚えはないのですが、Googleドキュメントからエクスポートした(docx)ファイルだと固定された状態になるようです。
これまでKindle本制作は「読めればいい」という方針でやってきたこともあり、どうすりゃいいのかさっぱりわからなかったんですが、一日調べまくって何とか解決できました。
GoogleドキュメントからKindle本を作っている人の大半はこれで困ると思うので、解決方法を残しておきます。
この記事を読むべき人
- Googleドキュメント(.docx)でKindle本を制作していて、kdpから品質について「Navigation - Missing NCX」(論理目次がない)と「Formatting - Line spacing」(行間隔が固定されてる)の指摘を受けて、解決方法がわからなくて困っている人
注意
以下、ご了承の上でお読みください。
- 筆者は本作業のエキスパートではありません。
- 本記事はGoogleドキュメントとcalibreを用いた論理目次の付け方と行間隔固定の解除方法について、私がやった解決方法をお伝えするのみで、最適解ではありません。
- 本記事の参考にした操作によって生じたあらゆる不利益または損害に対して、私はいかなる場合も一切責任を負いません。
- 本記事の内容は自己責任で行ってください。
解決方法要約(横読み本 ページ送り左→右)
説明画像なくても大丈夫って人はこの要約の項目をお読みください。
- Googleドキュメントの原稿を開き、全文章選択をしたあと行間隔を「1行」にする。(全選択→表示形式→行間隔→カスタムの間隔→行間隔を「1」、段落前と後のポイントは「0」)
- Googleドキュメントからエクスポートした原稿データ(.docx)、を『calibre』(電子書籍ソフトウェア)にインポート(「本を追加」)し、calibreの「本を変換」から(.epub)にエクスポートする。このエクスポートの設定時に、「目次」を生成するようにチェックを入れる。(「自動生成された目次を強制的に使用する」にチェック)。画像リサイズされたくない人は「ページ設定」で出力プロファイルを「タブレット」に変更する。
- (任意)生成された(.epub)ファイルには論理目次がついているが、空白行が見た目ではなくなっており、文章がぎゅうぎゅうづめの状態なので、気になる人はコードを書き換える必要がある。calibreの「書籍編集」でエクスポートした(.epub)を開き、左タブからページファイル(.html)を開いてコードを出す。
- コードと右タブのプレイビューを比較し、空白行になるはずのところに使用されているタグ(たぶん(p calss="black"なんとか)とかいうやつ。複数の場合あり)を見つける。そのタグをコピーし、ctrl+Fから検索置換をだし、<br>または<br />に置き換える。(左タブからページ内のhtmlを全指定すれば一括で置き換えできる。)
- ここまで終わったら編集データを保存してできあがり。
解決方法要約(縦読み本 ページ送り右→左)
- Googleドキュメントの原稿を開き、全文章選択を選択したあと行間隔を「1行」にする。(ctrl+Aで全選択→表示形式→行間隔→カスタムの間隔→行間隔「1」、段落前と後のポイントは「0」)
- Googleドキュメントからエクスポートした原稿データ(.docx)、を『calibre』(電子書籍ソフトウェア)にインポート(「本を追加」)し、calibreの「本を変換」から(.epub)にエクスポートする。このエクスポートの設定時に、「目次」を生成するようにチェックを入れる。(「自動生成された目次を強制的に使用する」にチェック)
- 「外観」→「スタイル」の「追加CSS」に縦書き化用のコードを書き込む。(コードはこちらさんのページからコピペ→【縦書き対応】Kindle本のDRMを解除し、ePubに変換する | web net FORCE)
- 生成された(.epub)ファイルには論理目次がついているが、空白行が見た目ではなくなっており、文章がぎゅうぎゅうづめの状態なので、気になる人はコードを書き換える必要がある。calibreの「書籍編集」でエクスポートした(.epub)を開き、左タブからページファイル(.html)を開いてコードを出す。
- コードと右タブのプレイビューを比較し、空白行になるはずのところに使用されているタグ(たぶん(p calss="black"なんとか)とかいうやつ。複数の場合あり)を見つける。そのタグをコピーし、ctrl+Fから検索置換をだし、<br>または<br />に置き換える。(左タブからページ内のhtmlを全指定すれば一括で置き換えできる)
- これで縦読みができ、空白行も復活しているが、ページ送り方向が左から右のままなので、これを右から左読みになるコードを書き加える。書き込む場所とタグは「縦組みのKindle本を制作する手順 2/6 - 電子書籍の作り方」の「ページ送り方向の設定」の項目を参考。
- ここまで終わったら編集データを保存。できあがり。
まとめると、Googleドキュメント上で行間隔を「1行 段落の前後のポイントは0」に設定し、原稿ファイル(.docx)を「calibre」にインポートし、目次をつけて(.epub)にエクスポートし、空白行のタグに置き換える、ということです。
縦読み文章にしたいならこれに加えて、エクスポート時に縦読み化用のCSSを追加し、(.epub)内にページ送りを右から左にするタグを追記する必要があります。
解決方法詳細(画像あり)
縦読みと横読み、両方この項目で説明します。
用意
- 完成した原稿(Googleドキュメントのdocxファイル)がある。
- calibreのインストールが終わっている(本記事ではcalibre-64bit-5.12.0.msiを使用)
Googleドキュメントの原稿データの想定
- 文章メインでたまに挿絵がある内容。
- 各章各項、「見出し」が設定されている。
- 1ページ目に「目次」がある(ページ数無しの方)。
- 全範囲に対して行間隔が「1」、段落前と後のポイントが「0」。
行間隔について補足
- 全範囲に対して「行間隔」が「1」、段落前と後のポイントが「0」になっているように設定する。(ctrl+Aで全選択した後、「表示形式」→「行間隔」)
まずGoogleドキュメントからの作り方を知りたいという人は、こちらの記事からをお読みください。
原稿データの用意ができたら次にお進みください。
【1】calibreに本を追加する
- 「本を追加」から(.docx)ファイルを選んで開く。
【2】書誌情報を編集する
- 編集したい本を右クリックし、「書誌情報を編集」→「書誌情報を個別に編集する」と選択する。
【3】表紙を削除する
- 原稿データ内の画像が勝手に表紙にされているので、「削除」を選択してOKする。
【4】本を変換する
- 編集したい本を右クリックし、「本を変換」→「個別に変換」と選択する。
【5】出力フォーマットを選択する
- 「出力フォーマット」で「EPUB」を選択する。
【6】ページ設定を選択する (画像リサイズをされたくない人)
- 画像リサイズをされたくない人は、「ページ設定」で出力プロファイルの「タブレット」を選択する。
【7】目次をつける
- 「目次」タブ内で「自動生成された目次を強制的に使用する」にチェックをいれる。
- 横読み本の人はこれで「OK」をして【9】へ進む。
- 縦読み本の人は「OK」しないで【8】へ進む。
【8】縦読み化CSSを追加する
- 「外観」タブ内の「スタイル」タブ「追加CSS」に、縦読み化用CSSを追加する。
- 追加するCSSは「【縦書き対応】Kindle本のDRMを解除し、ePubに変換する | web net FORCE」を参考にしてください。下記は紹介されているコードをコピペしたものです。
- 貼り付けたら「OK」する。(まだこの時点ではページ送りが左から右のままです。ページ送り方向は【10】で修正します)
縦読み化用CSS
(コピペですm(_ _)m)
* {
line-height: 150%;
}@font-face {
font-family: "ヒラギノ角ゴ ProN W3", "Hiragino Kaku Gothic ProN", "メイリオ", Meiryo, sans-serif;
}body{
font-family:"MS P明朝", "MS PMincho", "ヒラギノ明朝 Pro W3", "Hiragino Mincho Pro", serif;
writing-mode: vertical-rl;
line-break: normal;
-epub-writing-mode: vertical-rl;
-webkit-writing-mode: vertical-rl;
-epub-line-break: normal;
-webkit-line-break: normal;
}p{
margin: 0;
}h2{
margin-left:3rem;
margin-top:3rem;
}
とても助かりました!
【9】EPUBを開く
- 編集したい本を右クリックし、「書籍編集」を選択する。
【10】タグを置換して空白行をつくる
- 左下タブに目次があることを確認する。
- 右側タブのプレイビューが縦読みになっていることを確認する。(【8】で縦読み化した場合のみ)
- 左タブ「ファイルブラウザ」から本文1ページ目ファイルをダブルクリックし、1ページ目をメインタブに開く。
- shift押しながら下キーを押して本文ページのファイルを全て選択した状態にする。
- ctrl+Fを押して検索置換パネルを開く。
- メインタブをみて、空白行がある部分のタグをコピーし、「検索」に貼り付ける。(参考画像の本の場合は <p class="block_"></p> )
- 「置換」に「<br />」と打ち込んで「すべて置換」する。
- 他にも空白行になっていない箇所を探す。あれば本項6以降の変換を同様に行う。
- 横読みの本ならこれでおしまい。ファイルから保存し、【12】へ進む。
- 縦読みの人は【11】へ進む。
補足
EPUBに変換した直後の状態は空白行がなくなっているので、6~7の置換をする必要があります。
【11】ページ送りを右から左にするタグを追記する
- 左側「その他」タブから(.opf)ファイル(参考画像の場合はcontent.opf)をダブルクリックして、メインタブに開く。
- 「縦組みのKindle本を制作する手順 2/6 - 電子書籍の作り方」を参考にして、ページ送りのタグを追記する。
- これでおしまい。ファイルから保存をする。
ページ送り右から左化用タグ
(コピペですm(_ _)m)
<meta content="vertical-rl" name="primary-writing-mode" />
助かりました!
補足
- 縦読み化をした場合、KDPにアップする際はページ送り方向をアップロード画面でも指定するのを忘れずに。
【12】KindlePreviewerでEPUBをチェックする
- KindlePreviewerでEPUBを開く。
- ページ送り方向を確認する(画像は縦読み本、ページ送りは右から左の場合)
- 目次があることを確認する。
- 本文をみて、レイアウトおかしくないこと、空白行がちゃんとあることなどを確認する。
- 画像を使用したページも確認する。
問題なければこれでおしまいです。KDPにアップロードしましょう。
【補足】こまかいこと
- できあがった.epubファイルは一旦.zipから解答し、中の画像の大きさをチェックすることを推奨します。(意図しないサイズにリサイズされてしまった場合、一見してわかりにくいのでファイルの大きさを直接見た方が良い)
- Googleドキュメントからエクスポートしたdocxファイルでは、kindleと互換性のある論理目次がつきません。今まで出版した本を確認したところ、「見出し1」で指定したタイトルの一部だけが論理目次に表示されているパターンと、一つもついていない場合がありました。いずれにせよ不完全な状態で販売することになります。
- 今まで販売した本に対しては品質の指摘がきませんでしたが、中には販売停止になった人もいるとかいないとか。
- KDPから指摘を受けた後、 このやり方で修正した本をアップしたところ、論理目次も行間隔の問題も修正されたとAmazonから連絡がありました。追加の指摘もありません。
- calibreは今回の作業で初めて使用したツールなので、他にもやるべきこと、やったほうがいいことがあるかもしれません。私の経験不足のためそこまでの解説ができません。
- calibreを選択した理由はGoogleドキュメントで作ったdocxをインポートした時点でレイアウトが崩れず、目次の生成と空白行の置換だけで済んだからです。
- そもそもGoogleドキュメント自体がEPUBでエクスポートできるのですが、なぜかレイアウトが崩れるので却下。でんでんコンバータは専用タグを用いた原稿データーに書き換えなくちゃいけないので却下。OfficeオンラインのWordに一度インポートさせて作ったdocxはなぜかエラーが出てしまうので却下。そのあとツール探しを始め、まず「Sigi」を試したのでますが、レイアウト自体が崩れる為にそれを修正する必要があり、そこからの解決方法がわからなかったので却下。「kindle create」も試しましたが日本語未対応なのでこれも却下、という流れでcalibreに辿り着きました。
- 私の本は文章メインでたまに単ページ表示の挿絵という簡単な本なのでこれで全対処できましたが、一般雑誌の様にテキストと画像の配置にこだわりがある原稿の場合は、本記事の説明だけでは完全解決できないかもしれません。calibreに変換したEPUBのコードを見た限り、画像はサイズの指定がなくなり、オリジナルサイズになるようです。
以上
参考になった!って人は☆とかつけてくれると嬉しいです(^p^)