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言葉は嘘をつきません

18:エピローグ/僕と彼女のカーニバル(加筆修正版)

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18:エピローグ

 廃病院での一件から三日が経った。今日も報道ヘリの音が絶え間なく外を騒がせている。今も、あの廃病院のある辺りは野次馬でごった返しているのだろう。テレビでは昼のワイドショーがあの事件のこと報じている。

 神楽を救い出した翌日には、廃病院のことは公のものとなっていた。

「どのチャンネルもそればっかりね。もう飽きちゃった」

 僕もニュースやネットで散々みた。ましてや僕らは当事者なのだから、ニュースの報道を追いかける必要はあまりないわけだが。

 

 キッチンにいる神楽に声をかける。

「僕も手伝おうか?」

「いいから待ってて。もうすぐできるから」

 どうしても、ぜんぶ自分で作って僕を驚かせたいようだ。一体どんな料理が出てくるのか。

 今日は8月26日。神楽の誕生日である。

 

 僕はまたテレビに視線を戻した。あの廃病院が中継で映っていた。リポーターの後ろでは、警察関係者や他の報道陣が忙しなく行き来している。建物の中に僕らがいた痕跡は何一つ残していない。逃げた女も馬鹿じゃなければ、僕らの関与を口にすることはないだろう。

 被害者たちが調理されて食われていたことは、どのメディアも伝えていないようだった。遺族への配慮か、報道規制なのかはわからない。でもそれも時間の問題だと思う。既にネット上では、どこから情報を得たのか、廃病院に人間のバラバラ死体があって、調理された形跡があることまで噂になっていた。

 犯人は人を殺して食った。その犯人は、まだ捕まっていない。

 縛る力が弱かったのか、配管かどこかの突起してる部分を利用して縄を切断したのか、方法はわからないがクロウは拘束を解いて逃げたらしい。

 彼女は結局、何者だったのか。それもわからない。『普通』を求めていたということ以外、名前も、住んでいたところも……なにも知らないまま別れてしまった。

 

 でも、一つだけわかることがある。

 それは、彼女がただの人間であることだ。

 犬の時は狼が現れて、猿の時はゴリラが出てきた。

 そして今回の依頼は人間だった。けど、現れたのは宇宙人でも化け物でもない。

 ただの人間だったのだ。

 

 メディアでもネット上でも、人々は廃病院と川原の食害事件を結び付けて考えていた。いずれ正式に、人食い事件として扱われるだろう。

 だから、人のパーツがすべて揃わなくても、深い追求はないはずだ。犯人が食ったということになる。例え、あの現場から、腕が一本なくなっていたとしても――

 

 あの晩、神楽を部屋の前まで送り届けてから、僕はリュックごと彼女に渡した。中にあるものを見れば、少しは元気を戻してくれるかなと思って。

「……ありがとう」

 神楽は少しだけ笑みを作った。

「なぁ。今度の誕生日、ここに来てもいいか」

「いいけど、どうしたの?」

「僕が祝ってやるよ。それでさ、その時に……きみの手料理を食べようと思うんだ」

 その僕の言葉に、彼女は戸惑いを見せた。

「え、でもそれって……」

「駄目か?」

「……いえ、もちろん歓迎するわ。でも、どうして急に?」

「えっと、それはだな…………」

 僕が返事を躊躇していると、彼女の顔が嬉しそうな形に変わった。

「……わかった。今は言わなくてもいいわ。でも、今度ちゃんと、答えてもらうからね」

 あの時は神楽が気を回してくれたけど、この食事を食べ終えたら、僕はちゃんと言うつもりだ。「好きだ」って。

 

 

   ◇ ◇

 

「できたわよっ」

 テーブルには、高級レストランと見違えるほどの豪勢な料理たちが並べられていた。盛り付けも丁寧で、香辛料の効いた食欲を誘う香りが、湯気と共に漂っている。

「色んな料理で試してみようと思って、たくさん作っちゃった。これはスープとステーキで、こっちは炒め物ものに、揚げものっ。サラダもあるわよ」

「すごい、ほんとに料理上手だったんだな」

「普段はここまでしないのよ。でも今日は腕によりをかけたわ」

 そう言いながら、神楽はサッとエプロンを外した。

 テーブルに着席した僕は、しばらく目の前に広がる光景を堪能した。彼女の作った料理はまるで、宝石のように輝いて見えたのだ。

「神楽、誕生日おめでとう」

「ありがとう。さぁ、冷めないうちに食べましょっ」

 僕と彼女は、料理の前で手を合わせた。

 

「いただきます!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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次話:あとがき